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アンダーグラウンド掃討作戦(八十四)

 軍曹の行く手に現れた一人の男。暇そうに鼻くそを穿っている。

 椅子に座り、虚空を見つめてぼんやりとしているだけだ。船酔いでもしたのだろうか。

 いや違う。軍曹の姿を見て、スッと立ち上がった。鼻くそは豚箱の方に『ピンッ』と飛ばして知らんぷり。

 どうやら随分と、門番は『暇』だっただけらしい。


「開けろっ」「はっ!」

 軍曹が食堂の『腕相撲大会』で予選落ちした所を、門番は観ていないからだろう。軍曹の命令にビシっと従う忠誠ぶりだ。

 腰にぶら提げた鍵束から、目の前にある『豚箱の鍵』を選び出した。ガチャガチャと音を立てていると『ガシャン』と音がする。


『ギィィ』「どうぞっ」

 古いからだろうか。それとも塩害だろうか。

 軋む音がして扉が開くと、まるで軍曹に『入れ』と言わんばかりに手で示す。門番当人がそう思ったのか、慌てて手を引っ込めた。


「入れっ」「はーい。ちょっとお邪魔しますよぉ」「失礼しまーす」

 軍曹は気にも留めていないようだ。後ろから来た黒田と黒井に豚箱を示した。その様子を門番が不思議そうに眺めている。


 軍曹の威厳を台無しにするような、チャラチャラした二人。

 挙げていた両手を降ろし、腰を屈めると狭い扉を潜り抜ける。

 扉はサッサと軍曹が閉めた。門番が一礼して施錠する。

 流石軍曹。難なく豚箱へ『罪人』をインすることに成功だ。


 門番が振り向けば、そこには後ろから警備の男が更に二人と、最後に女王様の姿まであるではないか。

 余程の『危険人物』なのだろう。まぁ、だとしても『若い方』にしたって、軍曹に掛かれば。推して知るべし。


「こいつら、何をしたんですか?」

 事情を知らない門番が軍曹に伺う。しかし返事がない。

 誰か知っている人? と思いながら警備の者に視線を送るが、それでも返事がない。女王様には、恐れ多くて聞くことも叶わず。


「大人しくしていることね」「はぁい」

 女王様の警告に、黒田は素直に答える。流石に『鉄格子の中』である。もう心配することはあるまい。

「あのぉ。ベッドが一つなんですけどぉ?」

 黒井はどうしても『ベッドに入りたい』らしい。やっぱり最低な奴だ。女王様はお怒りのままに鞭を振る。


「お黙りっ! 三人纏めてベッドで宜しく過ごすんだねっ!」

 やはり少し顎を上げ、『汚物を見る目』だ。

 それが『堪らない』という輩も少なくはないのだろうが、やはり黒井は『声に出して言って欲しい派』である。短く『最低』と。


「うほっ!」「えぇぇ」

 声の調子から、黒田は喜んでいる。困惑しているのは黒井だ。

 女王様は鼻で笑いながら、もう行ってしまった。足音だけが廊下に響いている。静かになると黒田がそっと動き出す。

 どうやらベッドの男に耳打ちして、今夜の予定を話すようだ。


「お前『アルバトロス』か? だったらココから出してやるぞ?」

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