表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
727/1539

アンダーグラウンド掃討作戦(八十)

 眼光鋭く。と、言いたい所だが、如何せんあいにく目が細過ぎてそれは判別できない。

 五十嵐の表情を見る限り、冷静さを取り戻している。

 対する黒田も、完全にヘラヘラさを取り戻していた。先程五十嵐の体を『くの字』に曲げた男とは、到底思えない。


 女王様は、やっと一歩だけ下がった。そして、自分の腹をさする。

 幾らかは『格闘技の経験』があるからだろう。今になってやっと、『五十嵐が助けてくれた』ことを理解した。


 繰り出した刃物を黒田が狙っている。そこまでは反応した。

 しかし振り下ろされた腕を、ピタッと止めることは出来なかったのだ。勿論『脅すつもり』だった。『殺すつもり』なんてなかった。


『良い? 刃物を振りかざすときは、ちゃんと殺さないとダメッ』


 母の教えを思い出す。人差し指を横に振りながら、にこやかに話してくれたのに。今更ながら自分は甘かった。

 五十嵐との訓練で『実際の刃物』を使ったこともあるが、振り切ることは出来ない。どうしても『寸止め』だ。


 それに引き換え、刃物を向けた途端に目の前の黒田は『殺意』をむき出しにして、殺しに掛かっていた。

 刃物を繰り出した右手から、それを一瞬の内に奪い、右手に持ち替える。そしてそれを流れるように腹へ。

 又は右手で腹パンしてからの、左手で背中から刺す。


 五十嵐が刃を、手でしっかりと握りしめていなければ、五十嵐の何処か深くに刃物が突き刺さっていたのは間違いない。

 空気の流れ。軌跡を描いた黒田の腕が残した残像だ。それが真実を如実に物語っている。


 そして更に酷いことに、五十嵐を突き抜けた『衝撃波』が、フワッと腹を撫でたことを自覚していた。

 目の前の黒田は、自分が相手に出来るような男ではない。


「何が目的だっ!」

 五十嵐の問いに、黒田は首を傾げて答えない。

『俺に聞いているのぉ?』

 そんな顔をしてとぼけている。遂には、両手をスッと挙げて『降参』の意思表示までし始めたではないか。

 いやいや。油断できない。そういう『構え』なのか?


「何処の組織の者だっ! 何者だっ!」

『ねぇねぇ。俺って何処の組織の者だっけ? 誰か知ってる?』

『なっ、ちょっとぉ。俺に聞かないで下さいよぉ。知らねぇっすよ』

 黙ったままだ。黒田に見つめられた黒井は手を振り慌てている。

 仕方なく五十嵐の方を見て、『さぁ?』と首を傾げる黒田。


 すると、仕方なく思い出そうとしているのか。挙げていた両手を降ろして腕を組む。苦笑いで『こいつ、使えないんだよねぇ』と、黒田を親指で指してから、首を捻るとその手を顎に当てる。

 五十嵐は『やはり』と驚いて、更に警戒を強めるだけだ。


「軍の歴史上『重村大佐』なんて、居なかったんだぞっ!」

 それには黒井も驚く。どうやら五十嵐は何でも知っているらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ