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アンダーグラウンド掃討作戦(七十四)

 女王様が満足そうに立ち上がる。お言葉だ。

 そんな雰囲気を感じてか、盛り上がっていた食堂が一瞬で静かになった。再び聞こえて来るのは、波の音ばかりだ。


 隣にいた五十嵐が黙って前に出ているが、その影響も少しはあるだろう。ギャラリーは女王様と五十嵐を交互に見ている。

 奴は普段から極端に口数が少なく、『手で合図する』だけなのだ。むしろ周りの方が、ハンドサインを見て考える必要がある。


 まぁ、出す合図は幾つもない。

 代表的なものだと『消えろ』。そして『消せ』だろうか。故に、逆らう者など誰もいない。むしろ最初から距離を取る。


 何しろ、あの女王様の『護衛』なのだ。中途半端な奴じゃないこと位予想が付くではないか。

 直ぐに反応しないと危険なのは、百も承知だ。


「良くやった。褒めて遣わす」

 顎を上げた女王様からの一言に、誰も反応がない。

 壇上からのお言葉に、耳を澄ませ過ぎているのだろうか。それとも、次の言葉を『ワクワク』しながら、待っているのだろうか。

 とにかく波の音だけが、未だ食堂に鳴り響いている。


「パチ・パチ・パチ・パチ」

 すると五十嵐が、無表情のまま拍手を始めた。

 まったくもって『嬉しそう』でもなければ、『良くやった』でもない。一同は再び女王様と五十嵐を交互に眺める。

 女王様は『お言葉』を述べた後、その姿勢を維持したままだ。


 全員が理解した。五十嵐の『ハンドサイン』の意味を。

「良くやったっ! おめでとぉっ!」「感動をありがとぉっ!」

「ワー」『バチバチ』「ワー」『バチバチ』「ワー」『バチバチ』

『バチバチ』「ワー」『バチバチ』「ワー」『バチバチ』「ワー」

 すると、会場から割れるような拍手と、喝采の声が沸き上がった。


 やはり正解だ。これは、五十嵐の『ハンドサイン』だった。

 女王様が左手を振り上げ、満足そうに頷き始めたではないか。

 一同は、また一つ『新しいスキル』を覚えた。その名も『拍手をしろ』の、習得である。


 しかし、五十嵐が拍手を止めると、直ぐに静かになった。見事なり。これは、中々の『調教ぶり』である。


「予選突破おめでとう。じゃぁ次は、勝った方と、そっちのぉ」

 スッと右手を伸ばしてご指名である。しかし、名前が判らなくて言葉が詰まってしまったようだ。

 するとそこへ、五十嵐がそっと助言する。いつの間にか後ろに下がっていたのだろうか。しかし助言が終わると、再び前に出る。


「黒田、貴方よ。決勝は軍曹を下した『黒井』バーサスゥ」

 そこで女王様は鞭を振り上げて、大きな音を立てる。

「(バシンッ)『陸軍から指名手配』の男・くぅろぉだぁぁぁっ!」

「おぉぉぉぉっ!」「大物だぁぁ」「どぉりで腹が座っているぅ!」


 言いたいことは多々あるかもしれないが、黒田は黙って両手を挙げてポーズをとっているだけだ。まるで、期待に答えるかのように。

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