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アンダーグラウンド掃討作戦(五十八)

「しかしまぁ、いい加減疲れましたねぇ」

 ぼやきながら『麻婆豆腐』に舌鼓。山椒がたっぷり入ったそれは、舌も痺れる辛さが冷えた体を温める。


「もう疲れたのかよぉ。若いのに、しょうがねぇ奴だなぁ」

 こちらも麻婆豆腐を食べていたようだ。隣の男をレンゲで指して、呆れたような苦笑いだ。


「若くたって『こんな所』に居たら、疲れるんですって!」

 苦笑いで反論している所を見ると、二人は仲良しらしい。

 しかし、周りをぐるりと見渡して『こんな所』と言ったのが、他の奴らに聞こえてしまったらしい。

 口をへの字にすると首を竦め、大人しくなってしまった。


『すまんすまん。後で俺がぶん殴っておく』と、若いのをレンゲで指して頭を下げたものだから、トラブルにはならずに済む。

 どうやら年寄の方が、『気配り』に長けているらしい。


「マジで、いつまで居るんですか?」

 若い方がヒソヒソ声で下を指している。年寄は下を見た。

「いつまでって、俺に聞くぅ?」

 聞かれた年寄の方が驚いて顔を上げ、逆に聞き返す。

「知らないで居るんですかぁ? 無責任だなぁ。ハァァ」

 どうやら若い方は、大分イラついているようだ。少し声が大きくなってしまった。

 しかし直ぐに自覚して、かすれる様な声になって頭を抱える。


「お前『アルバトロス』って、知ってるかぁ?」

 話題を変えたのだろう。頭を抱える若い奴に、年寄が聞く。

「ゴルフのですか? 知ってますけど、俺はゴルフやらないっす」

 頭を抱えたまま若い奴が答える。すると年寄は右手を口に添え、頭を抱えた若い奴に囁く。顔は真剣そのものだ。


「『アホウドリ』のことだよ。お前、知ってるかぁ?」

「それ位、知ってますよぉ。鳥島に住んでるんですよねぇ」

 若い奴が頭を上げて、イラつきながら答える。どうやら『無関係な話題』を振られていると、考えているようだ。


「そう。それだよ」「それがどうしたんですかぁ」

 麻婆豆腐、最後の一口を食べて、再び口の中が痺れて来た。

「アホウドリってな? 飛ぶのが下手なんだよ」

「そうなんですか? 飛べない鳥は、只の恐竜ですよ?」

「フッ。いやまぁ、そうなんだけどなぁ?」

 どうも話が噛み合っていない。年寄は他の奴らに話を聞かれたくないのか、辺りを見回した。

 いや違う。食べ終わっても席を立たずに、さっきから『誰か』を探しているのだ。


「『アルバトロス』って奴を見つけたら、直ぐに降りるぞっ」

「えっ!」

 パッと振り向いた若い奴に、久しぶりの『笑顔』が戻る。

 しかしそれは、年寄が『シーッ』とやったものだから、直ぐに真顔に戻った。そして今度は首を傾げると、不思議そうな顔になる。


「あのぉ『直ぐに降りる』って、マグロ漁船から、どうやって?」

 輝く笑顔を見た瞬間、若い奴の顔色が『夏色の海』へと変わった。

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