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アンダーグラウンド掃討作戦(四十八)

 あれから何日経過したのだろうか。もう数えるのは止めた。

 宮園武夫は暗い独房で一人、ベッドの上で横になっている。手が届く所に小豆バーはない。それもそうだ。


 ここはNJS本社内にある独房だ。そもそも冷凍庫がない。

 高田部長イーグルの野郎が嫌みを言いに来てから、『お迎え』が来る様子はない。

 それとも本当は『殺そう』としているのだろうか。いや、そうとしか考えられない。何せ、ろくな食事も与えられていないのだ。

 だから次に『誰か』が来たとき、それが『死ぬとき』とも思える。


『ご苦労様ですっ!』

 どうやら誰か来たらしい。いや、もしかしたら、監視区域外で交わされた挨拶が聞こえて来ただけか。

『ガチャガチャ』『早くしろっ』『はっ』『バタンッ!』

 鉄製の扉の鍵が開いて、その扉が勢い良く開いた。

 途中で一瞬聞こえたのは、どうやら女の声だ。宮園は久し振りに『女の声』を聴いて目が覚めた。聞き耳を立てる。


『カツ・カツ・カツ・カツ』

 早足で歩く靴の音。段々とこちらへ近づいて来る。

『ハイヒール、だと?』

 宮園はそう確信した。宮園は足音を聞いただけで、その反響音から『靴の種類を特定できる技能』を保有しているのだ。

 ちなみに日本での保有者は、僅か三名である。


『二十代、細身、筋肉質、ショートヘアー』

 それだけではない。宮園は足音だけから、付随する女性に関する『様々なこと』を、何と想像することもできるのだ。

 しかも、結構リアルに。正に驚くべき技能である。


『ちっ。後ろから来るのは野郎か』

 どうやら近付いて来ているのは、『ハイヒールの女』一人ではないらしい。それにしても、聞き慣れない靴の音だ。

 サラリーマン愛用の革靴でもなく、掃除屋のスニーカーでもない。それが後ろを追い掛けている。


 しかし野郎の解析は専門外だ。むしろ『ノイズ』にしかならない。

 そう思っていると、独房の前で足音が止まる。

 宮園は『お迎え』のことも『死ぬとき』のことも忘れて、振り返るのを楽しみにしている只の変態に、変体していた。


「裏切り者は、こいつか?」「はいそうです」

 やはり女の声だ。しかも若い。張りがある。

「開けろっ」「はっ」

 気が強くて高圧的。すると、壁を向いて薄目を開けていた所に、明るい日差しが。

 いや、強力なライトだろう。反射して見えているだけだ。


「起きろっ! この豚野郎がっ!」

 ベッドを蹴り飛ばされて、宮園は飛び起きた。

 そこに見えて来たのは、ベッドに右足を掛けてポーズを決めた女だ。後光が射していて、全身の黒い衣装が、革独特の光を放つ。


『じょ、女王様?』

 宮園は、『想像を超えた現実』に、歓喜すらしていた。

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