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アンダーグラウンド掃討作戦(三十八)

 再び報告書を引き寄せると、次の頁を捲った。すると早くも、赤井の表情が一層曇る。

 今回の報告書はいつもの『ブラックジョーク』はなく、確度の高い情報のみが淡々と記載されてあるようだ。

 それを赤井が、淡々と読み上げて行く。


「ドローンは高度を『上』『中』『下』の三段階に採る」

 赤井はそこまで読むと黒板の方へ振り返り、チョークでアンダーグラウンドの断面図を書き出した。

 天井があって、『三十一メートル』と記載している。


 三角形と四角を描いて一般住宅、縦長の細長い四角の中に小さな正方形を並べて商業ビルだろうか。それを幾つかパパっと描く。

 いずれも今は廃屋で、使えそうな建物はレッド・ゼロの基地であり、生活拠点でもある。


 描き終わった所で、今度は黄色いチョークに持ち替えた。

 それで楕円を書いて立体化させる。『ブーン』と書き加えて『飛んでいること』を表現してみせた。

 実物と色、形が違っていても、それが『ミントちゃん』であることを確認する奴はいない。


「上に一機、中に二、三機、下に残りが展開し、互いに連携する」

 黒板に『ミントちゃん』をピラミッド型に書き加えた。

 そしてそのまま黄色いチョークで、一番下の『ミントちゃん』から『ぐにょぐにょとした曲線』を描く。


「演習時は『空砲』かつ『空気銃』だったらしく、ほぼ無音」

 今度は白いチョークに持ち替えて、簡単な『人型』を描く。それを描き終わると、直ぐに赤いチョークに持ち替えた。

 シュシュっと『ミントちゃん』から赤い線を引き、今描いた人型から血しぶきを描く。


「こんな感じらしい」

 赤井は赤いチョークを置き、手をパンパンと払っている。


「あのぉ、それは『本当』なんですかぁ?」

「疑うのかぁ?」「疑ってはいませんけどぉ」

 赤井が『ブラック・ゼロの報告書』を指さして、質問を投げ返す。どちらも渋い顔をして『困っていること』だけは判る。


 確かに『実際に自分の目で見たこと』のみを、信じる輩もいるだろう。しかしこれを『実際に見たとき』は、イコール『死』なのだ。

 それが疑いようのないことだけに、事実として受け入れられないのも判る。これもまた、人の気持ちとして事実なのだ。


「先日陸軍の、富士演習場での訓練に潜入して、確認している」

「えぇっ、それは本当ですかぁ?」「どうやって潜入したんだか」

「日付を特定するのだって難しいのに、一体どうやって?」

 赤井は黙って頷いている。顔だけは皆と同じ『だよね。だよね』なのであるが、赤井には『本当である』との確信があった。


「この写真は訓練場から鹵獲した『実物』だ。相模湾で回収した」

 赤井は黒板に貼ってある写真を、ドンドンと叩く。

「意味判らん!」「ブラック・ゼロやるなぁ」「まったくだ」

 何しろ写真を撮影した赤井本人も呟いているのだ。間違いない。

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