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アンダーグラウンド掃討作戦(三十五)

「まぁまぁ。静かに! しぃずぅかぁにぃっ!」

 苦笑いをしながら赤井が呼び掛ける。赤井にしてみても、自分の気持ちを代弁している皆の声を打ち消すのは気が引けていた。

 両方の眉毛で八の字を描きながら、両手を前で振っている赤井の顔の方が面白くて全員が前を向く。再び静かになった。


「えーっと、ブラック・ゼロの調査によるとだなぁ」

 手元の資料をパラパラと捲りながら、伝えるべき項目を選定している。伝えるのは、必要最低限にしておきたい。


「両手から二十ミリ機銃、オプションで肩にロケットランチャー」

 部屋が水を打ったように静かになった。顔も真剣だ。しかし、メモを取るような細かい奴はいない。


「それと、全身防弾」「AKは?」

 AKとは、アンダーグラウンドで流行っている『AKー47』のことを指し、地上で流行っている『AKーB48』とは、全然似ても似つかないものだ。


「多分、AKも効かない」「マジか。M16もか?」

「口径一緒だし。ダメだろうなぁ」「全員分仕入れたのになぁ」

 そんな物騒な物を、一体何処で仕入れて来たのやら。


「これ、頭の奴は暗視カメラ」「その頭も防弾なのぉ?」

「おう。頭もダメって書いてあるな」「おぃおぃおぃおぃ」

 言葉を続ければ続ける程部屋の中が騒がしくなって来た。赤井だけが冷静に資料を見ながら、淡々と説明を続けている。


「それに『頭を破壊しても止まらない』って書いてあるなぁ」

「えぇ。じゃぁどうすんだよ」「向こうは二十ミリだぞぉ」

手榴弾パイナップルかC4で吹き飛ばすしか?」

「C4なら、ブラック・ゼロから回して貰ったのあるなぁ」

 どう破壊するかを、もう検討し始めている。


「お前が気を引いている間に、俺が後ろからだなぁ」

 部屋のあちらこちらで仲間同士が、まだ見ぬ敵に『どう立ち向かうか』を、シミュレーションを始めた輩も。

「俺はハチの巣じゃねぇかよっ!」「頼むよ。そこを何とかっ!」

 さっきまでの笑顔はなく、一同の顔も真剣だ。まぁ、『囮』に指名された者を除いては。


「静かにっ! しぃずぅかぁにぃっ!」

 再び赤井が両手を振って一同を宥めに掛かる。一同は、やけに明るい赤井の顔を見て、三度静かになった。

 何か『弱点』とか『作戦』を教示してくれるのかと、目を光らせ耳を立てて注目している。


「正直『こいつ』には、人間では歯が立たん!」

 赤井は諦めたのだろうか。いや違う。赤井の目を見れば『そうではない』ことが判る。全員にだ。

 だから誰一人として、声を発することもなく次の言葉を待つ。


「『こいつ』にはブラック・ゼロが鹵獲した同じ奴をぶつけるっ!」

「やったぁ!」「いやぁ、良かったぁ」「確かにあぶねぇもんなぁ」

「流石ブラック・ゼロだぜぇっ!」「何だ。うちにもあるのかよぉ」

 嬉しそうにしている一同を見て、赤井だけが苦笑いである。

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