表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
680/1541

アンダーグラウンド掃討作戦(三十三)

「今の音、何ですかね?」

 黒井に言わせれば、『銃にしては大きい』又は、『ミサイルにしては小さい』である。


「駅の方からだな」「えっ、脱線したんですか?」

 心配そうに黒井が言う。黒田は首を傾げている。

 そうなのだ。協力者である機関士が乗っている貨物列車が、とっくの昔に駿河小山駅を通過している筈だ。


「脱線したら、もっと大きな音だろうなぁ」「そうですか」

 考えながら黒田が言うので、黒井も納得して頷いた。

「知らんけどな」「何ですかもぉ」

 適当だったらしい。しかし『元陸軍』の黒田には確証があった。


「ありゃぁ、バズーカーだなぁ」「あぁ。って、本当ですかぁ?」

 疑り深く黒井が黒田を睨み付ける。また適当なことを言っているのではないだろうか。


「バズーカーなんて、積んでなかったじゃないですかぁ」

「あぁ。『単品』ではな」

 思い出すような仕草から意味深にアクセントを付けて、黒田が黒井を見つめる。しかし黒井には見当が付かない。


「どういうことですか?」

 すると『ダメだなぁ』な顔になった黒田が、流れに乗って遊び始めてしまった。黒井は気になって黒田を追う。

「だからぁ、どういうことですかって!」

 少々大きな声で呼んだからだろうか。黒田が人差し指を口に付け『シーッ』と無言で指示する。黒田が上を指さす。

 黒井も思わず黙った。橋の下を通過していて、声が反響したのも反省する。そしてその橋の上を、凄い勢いで車が通り抜ける音が。


 ライトの明かりが水面まで落ちて来て思わず首を竦めるが、それでどうにかなるものでもない。

 橋を抜けて見えて来たのは、軍用トラックが何台も通過して行く姿なのであった。


『私は流木です。私は流木です。私は流木です』


 そのまま暫し、流るままに揺られて行く。力を抜いてダラーンと。

 それにしても、いつから黒井は『改名』したのだろうか。あんなに偽名を使うのを嫌がっていたくせに。今更である。

 黒田は黒井の表情が見えて、鼻で笑っていた。


「お前『流木のフリ』したって、ダメだからなぁ?」

「何で判ったんですかぁ?」

 黒田は笑っているだけで答えない。パッと立ち上がり走り始める。

 魚道を通るときは浮き輪にしては重たい『ミントちゃん』を、抱えて陸を走るのだ。そしてまた川へダイブ。

 昼間だったら通りから丸見えかもしれないが、今は丑三つ時。良い子は寝ている時間だ。心配ない。


 夜明け前までに楽しい川下りを切り上げて、『戦利品』の解析をしなければならない。時間は刻一刻と迫っているのだ。

 黒田が入手した情報だと作戦開始は一週間後だが、この騒ぎだときっと延期になるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ