アンダーグラウンド掃討作戦(三十)
ホームに転がった柳田に、金子は近付こうとするが近寄れない。
ブンブン羽音をたて、赤いランプがチラチラ見える『ドローン』が、柳田に向かって発砲しているからだ。
こんな風景見たことがない。
おまけに、『ドローン』とは似ても似つかない『巨大ロボ』が、『よっこらしょっ』と掛け声と共に降りて来た。
金子は駅員ではないので、『切符を拝見』とも言いにくい。
赤いランプはどう見ても『目』で、降りながら今度はしっかりと金子を捉えている。
金子は思わず貨物列車の方を見た。等間隔で並ぶ『赤い目』が、貨物列車の一番後ろまで並んでいるではないか。
するとそれを隠すように、最初のロボットが視界に入る。
「あ、あ、あんたっ! 立てるかっ!」
柳田に声を掛けたが知らない奴だ。ただ『陸軍の奴』としか判らない。だとしたら一応『仲間』なのだから。
そう思ったのだが、転がり続ける薬莢を見て足がすくむ。
「あぁ。うわぁぁっ!」
柳田が顔を上げた。するとそこには、自分を追って来るかのように自動警備一五型が迫って来ているではないか。
咄嗟に立ち上がって走り出す。あっという間に金子の横を走り抜けたが、その先で躓いて転んだ。
「あんた逃げるのかよっ!」「良いから逃げろっ!」
完全に腰が抜けているが、生きることに執着はあるようだ。再び立ち上がると、素敵な『捨て台詞』を吐いて一目散に走り出す。
それを見て、金子も走り始めた。列車を停めた原島でさえも、まさかこうなるとは思ってもいなかったのだろう。
二人とすれ違い、見えて来た『ロボット軍団』の姿を見ると、血相を変えて一緒に走り始める。
「あれは何なんだっ!」「イチゴちゃんだよっ!」
「何だそれっ!」「ふざけてんのかよっ!」
柳田の答えに、金子と原島が同時に怒りをぶつける。
「ふざけてねぇよっ! 自動警備一五型だよっ」
ちらっと振り返った柳田が、更に顔を引きつらせた。直ぐに前を向いたかと思うと、一層の加速を始めた。
後ろを走る金子と原島も、その顔を見て思わず振り返る。
それはさっきの予想通りの状況だ。つまり悪夢。
シートを払い除けた自動警備一五型が、ホームに降り立った所ではないか。
そして全機が一斉に、走り続ける三人の方へと目を向けている。
「こっち見んなっ!」
それを合図に、一斉に自動警備一五型が動き出す。何処まで逃げれば良いのか何て、見当も付かない。
「こっち来んなっ!」
その命令も『階級が下』だからなのか、従うそぶりもない。
三人は改札口へ向かう階段を、一段飛びで上り始めた。




