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アンダーグラウンド掃討作戦(二十)

「うおぉぉぉぉっ」『パパパパパッ』

 柳田は叫ぶ。無駄だと判っていても、引き金を引き続けるだけだ。

「止まれぇぇぇぇっ!」

 セリフを変えても『チュイン』と鳴り続ける効果に変更はない。

 自動警備一五型イチゴちゃんは『コイツ何だ?』と観察しているのか、ジッと二つの赤い目を柳田に向けている。


 顔面も何もかも『防弾仕様』であるのは、黒田も黒井も理解した。

 どうやらブラック・ゼロの拠点へ無事に戻ったなら、その辺の所も報告が必要だ。


 黒田は頭から背中へと移動して、両手でぶら下がり銃弾をやり過ごす。黒井は足元で頭を守りながら小さくなっていた。

 今『張り切っている』のは柳田だけだ。


 しかしこのとき、柳田には幾つか『知らないこと』があった。


 確かに制御コンソールを使わずに『起動』した場合、自動警備一五型イチゴちゃんは『フリーモード起動』する。

 それは戦場、その中でも『最前線』に於いて『全てのコンソールが破損した場合』を考慮した仕様なのだ。

 だから『人道的』という単語とは無縁である。


 目の前で起動した自動警備一五型イチゴちゃんは、演習時に『特別プログラム』が仕込まれている。

 それは当初『操作側』と『テロ側』に別れて始まった『実戦演習』だった訳だが、陸軍のフル装備で固めた『テロ側』が、余りにも『簡単に負けた』のが事の発端だ。


 製造メーカーであるNJSが『操作側』となり、部隊全員が『テロ側』になって『何でも有りの最終決戦』が行われた。

 それでも『流石に死者は不味い』という配慮から、『接近時は手出し無用』が急遽仕込まれて、解除されぬまま今に至る。


 確かに柳田は、現在自動警備一五型イチゴちゃんの視点画面に、『ターゲットロックオン』の赤文字が点滅表示されている。

 それでも冷静に『大人しくニコニコ』していれば、襲われることはなかったのだ。

 ついでに報告すれば『残弾ゼロ』の赤文字も点滅表示されていた。

 更に『近接攻撃不可』については、柳田の顔を捉える度に大きく表示され視界を妨げている。


『カチカチ』

 遂に89式が弾切れとなる。柳田は手元の銃と赤い目を交互に見て、絶望的な気分になっていた。こんな狭い貨車の上で、特殊合金製の腕を振り回されたらひとたまりもない。


「話し合おうっ! なっ!」

 遂に銃を離した柳田が、両手を挙げて自動警備一五型イチゴちゃんに話し掛ける。果たしてそれが、何の意味があるのか。


「冗談じゃないぞっ!」

 そこへタイミング良く『アフレコ』を入れたのは黒田だ。柳田は驚く。とても感情が籠っているではないか。

 まるで『ミントちゃん』を起動し始めた自動警備一五型イチゴちゃんご本人を、代弁するかのように。

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