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アンダーグラウンド掃討作戦(十四)

 目の前に振り下ろされて来たのが『銃剣』だと判る。それは大分前に『見覚え』のある奴だ。


 それを見た黒井は『切られた』と思った横っ腹が、服でさえ無事な理由を理解する。自衛隊の銃剣は、平時では刃がないのだ。

 泥棒を捕まえてから縄を編むじゃないが、自衛隊では戦闘前に研いで刃を入れるのが習わしとなっている。


 しかし、真っ直ぐに向かって来る銃剣の先は鋭く、そんなに強く振り下ろしたら凄く痛そうなんですけど。

 刺さったら、どうしてくれるんですかっ!


 黒井は『勘違い』に気が付く。この銃剣は『刃があるぞ』と。

 この時代、日本は帝政ロシアと『戦争中』だった。休戦中でもそれは、戦争期間と認識されているのだろう。


 正に今、こちらに向けられている柳田の目には、『殺意』が込められているではないか。


 三千メートル上空で、早期警戒管制機のコックピットから見えるよう翼を振っても機銃をぶっ放しても、『相手の目』は見えない。

 初めて『戦闘相手の目』を見たのかもしれない。


 黒井はそれでも死にたくはない。それに、最後に見たのが『自分を殺しに来た奴の必死な顔』というのも頂けない。

 今は左腕に銃剣が刺さろうが、顔に刺さるよりはマシと考える。パッと左手を上げていた。間に合わない。

 銃剣は左腕には刺さらずに、互いの腕で『十字』を描く。


 すると銃剣の先が、目の前で止まる。いや正確には『急速に減速』して、目の前で止まった。柳田は尚も押して来るが、それは耐える。


 黒井は押されながら、背中を逸らしていた。右足が前に行ってしまい態勢が悪い。直ぐに右手を加勢させて柳田の手首を掴む。

 それでも上から押し込まれて、状況は不利である。


「うおぉぉぉっ!」「くうぅぅぅぅっ」

 断然不利である。鉄橋を渡り終えた貨物列車が、足音を再び静かにした頃に黒井は限界まで背中を逸らしていた。絶体絶命だ。

 目を見開いた柳田が、左手も添えて銃剣を押し込んでいる。


 突然黒井は『光』を感じた。突然、黒一色だった機関車のシルエットに『青』が還り、空に見えていた星が消える。

 そして直ぐに色を失いて黒へと戻る。いや、機関車からのスパークは相変わらずであるのだが。今はそれを気に病むな。


 突然の発光に『何だ』と顔をしかめたのは柳田も一緒だ。

 むしろ、今この場面でなら『黒井の仲間』とも思う。その証拠に柳田の目の前が緑一色になっていた。役満だ。思わず顔を背ける。


 実際に柳田が目にしたのは、撮り鉄の『強力なストロボ撮影』だった訳なのだが、それは列車の『真横』からのものであった。

 柳田のストロボと同じだったのだが、本人は気が付かない。それよりも、『緑一色では死なない』と気が付き、再び力を込める。


 次の瞬間黒井の巴投げを食らい、柳田は宙を舞っていた。

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