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アンダーグラウンド掃討作戦(十一)

 銃口を突然持ち上げられて、柳田は驚く。

 黒田は手前に居やがった。舌打ちする暇もない。トリガーを引きながら、窓から銃を抜きにかかる。しかし抜けない。


『パパパパパパッ』

 銃身をグッと引いて、下に向ければ良い筈だ。

 しかし窓の位置からして下に向けるには、『ジャンプする』か『台の上に上る』かの二択だ。揺れる貨車の上で? それはない。


「放せぇぇっ」『パパパパパパッ』

 柳田は叫ぶ。それにしても凄い力だ。こっちは両手で銃を掴んでいるのに、どうして思い通りに動かない。

 理由は一つ。相手の力の方が強いからだ。


 悔しくなって、柳田は扉を蹴る。

 しかし幾ら蹴っても、こちらからは開かないのだ。何の効果もない。ただ『ガンガン』という音だけが、無情に響くのみ。


 すると、ゆるやかに坂を下っていた貨物列車が左に曲がる。足柄駅の手間にある左カーブだ。

 だから外にいた柳田は、右側に振られて行く。

 柳田が右足で扉を蹴っていて、『片足だった』のが理由であろう。しかしそもそもの原因は、少々『スピードが出ていた』ことによる。


 今頃は機関士が、弾丸に怯えながらも必死でブレーキを操作していることだろう。


 柳田が左足で一歩、右へ動いた瞬間だった。扉が突然開く。

「危ないだろうがっ!」

 聞こえて来た黒田の声、その意見は、だいぶ理不尽である。

 いくら銃をぶっ放していたとしても、突然扉を開けたら驚いてしまうではないか。なんて危ないことをするのだ。


 柳田は『銃を離すまい』としていた。というより実際は『離せなかった』が、正しいかもしれない。

 トリガーを引き続けていたからだ。

 人差し指が引っ掛かってしまって抜けなくなり、窓に挿し込んだ銃と一緒に『回転』を始めてしまっていた。


「いてててっ」

 黒田はそんな柳田の声、その意見は聞いちゃいない。扉をグイッと押して、あわよくば『落っこちろ』位に考えている。

 銃も碌に使えない『一般兵』なんて、そんなの『ひと捻り』だとも思っている。間違いなく。


 だって開いた扉から見えて来た『馬鹿の一つ覚えな乱射男』は、姿勢を崩しつつある。ここはあと一押しだ。

 その頃貨物列車は、足柄駅に侵入していた。ホームが黒田の目の前に見える。多少速度は速いが、今なら『死にはしない』だろう。

(お前はここで下車だ。ありがたく思えよっ!)


「おりゃーっ!」「ぐはぁっ!」

 気合一発。飛び蹴りが決まった。黒田は『何をされたのか』も判らずに、後ろへ吹き吹き飛ぶ。


 だから言ったでしょ。『突然扉を開ける』のは、危ないって。

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