アンダーグラウンド掃討作戦(四)
半ば追い出されるように運転台を追い出された兵士は、反対側の機関車へやって来た。
横を通ったとき、機関車から『ウォンウォンウォン』とコイルが鳴くような音が聞こえて来る。続いて『プシューッ』という音も。
「もう出発するんじゃねぇの?」「やヴぁいな」
二人の兵士は、自然と走り出していた。
後で上官に『確認結果』を、報告しなければならないのだ。
『出発しちゃったので、聞けませんでした』
とは言えない。言った所で叱責は免れぬ。
それより何より、上官が納得する『理由』を考える方が難しい。
『もっと早く言ってくれればぁ』
こんな『理由』を言ったらどうなるか。相手は正に『百戦錬磨』の上官なのに。『説明になっとらん!』と、一喝されて終わりだ。
「ちょっと! ちょっと!」
機関車のドアを叩く。すると直ぐに顔が飛び出して来た。
それは『爺さん』でも『若人』でもない、足して二で割った感じの『中年』である。
しかも帽子を取って汗を拭った頭は、ピッカピカである。
「危ないから下がって!」
けんもほろろである。窓から出した手を『下がれ』と振り始めた。
「ちょっと伺いたいのでs『ピーッ』
警笛が鳴って兵士の質問が無効化される。
そんな『似顔絵』を突き出されても、買う気はない。『あっちへ行ってくれ』と振る手のペースは変わらない。
「fskでfあdふぁあえ、fぇds;あdだぁ!」
すると何やら大声が聞こえて来た。日本語だろうか。兵士にはもちろん、著者にも何を言っているのか判らない。
しかし、手を振っていた男には意味が通じたらしい。運転席の方を向いて頷き始めた。
おまけに、何だか『はい』とか『はい』とか『はい』とか言って、恐縮している感もある。よっぽど怖い『上司』なのだろう。
「こんな所で油売ってないで、上官の靴でも磨きに行け!」
強い調子で言っておいて、片目を瞑り親指で『あいつがそう言っている』と示す。
両手の人差し指を真っ直ぐにして、頭の両サイドで上下させる。兵士から見て、それは『角』に違いない。
そして再び片目を瞑ると、親指で『鬼』を指さす。
「sぇふぁ? おsれあ;? はsldfしめ;dふぁえtだ!」
またまた語気を強めてお怒りである。男が首を竦め、口をへの字にして縮み上がった。
「あのぉ、何て言っているんですか?」
首を傾げて聞いているのは、ポカンと見上げている兵士だ。『似顔絵』を更に差し出したのだが、男は手を横に振る。
「南部弁でさぁ。死にてえのかっ? 俺がやろうか? 『函館のシモ・ヘイヘ』とは、俺のことだ! と、言ってるんでさぁ」




