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ハッカー殲滅作戦(二百七十七)

 第一師団は指揮官を失っても、流石の部隊であった。

 スムーズに指揮権が移譲され、師団全体としては統制を保ち任務を遂行し続けている。


 怪我人を運び終わった『血塗られた所長室』で、石井少佐は溜息を付いた。医者として一つの仕事を終えた、ということではない。

 自分の管理下に於いて、これ程の失態を晒してしまったのだ。


 消防も警察も、一般人が一人もいないことから、辛うじて『軍の機密』は保持されている様に見受けられる。

 もちろん、見えている範囲であるが。


 今、研究所全体が第一師団の指揮下にある。

 ここで『何が起こったのか』の調査に、立ち会うことすら許されなかった。『現状の調査結果』を聞くことも駄目だった。


 医者としての出番が終わった今、もう後は『顛末書』を書く準備をした方が良さそうだ。いや、それとも『辞表』だろうか。

 しかし今となっては、それを受け取って貰えるかも怪しい。


 取り調べを受けた後は、後日『今日付けで除籍』もありうる。


 部下達は、今後どうなってしまうのだろうか。

 思い浮かぶ部下の顔。守ってやれなかった井学大尉は、せめて海軍に戻してやりたい。


 右井少尉。こんな作戦を考えたお前は駄目だ。

 ターゲットの『軍歴』を知った上でのこの失態。事前の調査とは一体。認識が甘すぎるのだ。

 実弾を掻い潜って来た先人達を、甘く見過ぎてはいないか?


 そもそも我々『防疫給水部』の武器は『知力』であり、『体力』でも『腕力』でもない。主戦場は『頭脳戦』なのだ。


 予備役だか退役軍人だか知らないが、碌な訓練もせず『寄せ集めの集団』で作戦に臨んだらどうなるか。

 また一つ『好例』を作ってしまったではないか。


 第七研究所から『爆音』と『絶叫』が消え、静けさを取り戻したころ、日は落ちて暗くなっていた。


 右井少尉は行方知らずだ。連絡が全く取れない。

 作戦は、もう中止したのだろうか。結局何も判らないではないか。


 石井少佐は、あちらこちらの『立ち入り禁止』と書かれた黄色いテープに誘導され、決められた道筋を辿って『迎賓館入り口』に来ていた。今となっては、随分と『皮肉な名前』にしたと思う。


 そのまま何の気なしに『ハーフボックス』に乗り込むと、腕を組んだ。そして、ふと思う。


「研究所に、ヘリが置きっぱなしだなぁ」

 再び井学大尉の顔を思い浮かべて、小さく舌打ちする。悔しい。


 誰に取りに行かせるか。それが問題だ。青森の大和まで回送するのも含めて。とりあえず、それを考えることにして目を閉じた。

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