ハッカー殲滅作戦(二百七十四)
高田部長は『ヘリの正しい停め方』を知らない。
ドンと着地した後は尻尾は折れ、折れたローターも良い感じで飛んで行き、次々と敵をなぎ倒す。
そして降機してから直ぐに、爆発炎上するのがお決まりだった。
所が今度は違う。ヘリポートに見事着陸し、何だったら『着陸後のチェックリスト』をこなす余裕さえある。
サラサラッとそれにサインをして、整備員に渡すのも良い。
「良いか、お前は黙っていろよっ」
返事を待たずに本部長が向き直り、ヘルメットを脱いだ。『ここからが勝負』と意気込む、とても凄んだ顔だ。
しかし、似合わないヘルメット越しに言われても、高田部長には効果がない。ヘルメットを脱いだ顔がそう語っている。
キャノピーをグッと上げて、先に本部長が慣れた感じで堂々と降りた。シャツの襟を直して肩を揺する。
そこへ整備員が渋い顔で走り寄って来る。
「お疲れ様です。少佐。あれ?」
石井少佐専用ヘリの御帰還と思って走り寄れば、どうやら違う人物が。だとしたら『少佐の客人』だろうか。
本部長には整備員のその一言で、このヘリが『石井少佐用』だと判った。
そして本来の操縦士が『井学大尉』であることも。
整備士は後席から、遅れて降りて来るパイロットを見つめていた。とそこへ、本部長から話し掛ける。
「石井少佐殿は、研究所で怪我をされて重傷だ」
「えっ? 本当でありますか?」
「あぁ。こんなときに、嘘を付いてどうする」
渋い顔である。今日はなんて日だ。驚いて慌てた整備員が救いを求めたのは、井学大尉の方だった。
しかし、パイロットとして降りて来たのは別人ではないか。
見たことない奴だ。こいつ誰だ?
「井学大尉も少佐殿とご一緒しててな。伝言を頼まれた」
「それは大変だっ! どうしよう」
確かに二人はいつも一緒である。しかし士官が二人も負傷とは。
「慌てるな。しかし、指揮系統が混乱しているのは確かだ」
「はい。連絡が付かなくて困っているんです。電話も無線も」
「だから来たんだ。研究所の者だが、指揮権の移譲を頼まれている」
何もないポケットをポンポンと叩き、整備員が頷くのを待つ。
「この部隊の、次の序列はどなたかな?」
「大森中尉殿であります。ご案内します」
整備士がパッと左手で入り口を指して走り始める。しかし直ぐに止まった。本部長が『止まれ』の合図をしたからだ。
「場所は判る。それより『名医』を研究所に手配するんだ。急げっ」
「はいっ! 承知しましたっ!」
敬礼している整備員の横を、二人は物凄い速さで走り抜けた。




