表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
638/1542

ハッカー殲滅作戦(二百七十一)

 東京の地形を思い出し、菅野課長は全てを理解した。

 そうか。この機体は『海から来た』のだ。そうに違いない。


「おい、地図あるか? 東京の」

 菅野課長の問い掛けに、直ぐに応じる者がいない。

 それは仕方ない。みんな埼玉県民なのだ。

 考えれば直ぐに判ることだ。そんな『最高機密』を、入手できる訳がないではないか。埼玉県を何だと思っているのだ。

 全員の目がそう語っている。


「ありますけど? 東京の地図なんて、何に使うんですか?」

 違った。単に『必要としていない』だけだった。

 何を隠そう埼玉県は、東京都の隣である。それも、千葉県の様に大河という『国境』で分断されていない、陸続きである。

 だから東京に近い所には、鉄道の代わりに『ハーフボックス乗り場』が沢山整備されていて、東京二十三区と同様の移動が可能だ。

 何だったら既に『東京』と名乗っても問題ない。


「良いから見せてくれっ! 早くっ」「はいっ」

 直ぐに『昔々壁に貼ってありました』大きな地図が出て来た。それを机上に広げると、再び菅野課長は睨み付ける。


 そして、指で山手線を辿りながら品川へ。そこで一旦停止して『考えている』と思ったら、指その先と進む。

 そこにあったのは『海』である。母なる海である。東京湾である。


「なるほど。読めたぞっ」「何がですか?」

 菅野課長の呟きに、丸井が問う。丸井には全く判らない。


 今は結構『緊迫した状態』であると思っていた。

 それなのに、菅野課長が急に品川から、品川海岸への『休日の予定』を検討している様に見えたからだ。

 しかし菅野課長は、自信ありげに話し始める。


「潜水艦に搭載された『Tuー160』が、だな」「えっ?」

「品川沖で射出されて山手線の上を通り、新宿駅に到達」「……」

「そっから急上昇して今に至る。という訳だ」「……」

「どうだ。そうとしか説明できないだろう?」

 目を丸くしている丸井に聞き返すが、苦笑いのままだ。


「いや、山手線の上を飛んだら、もっと大騒ぎになりますよ」

「でも、レーダーに引っ掛からない様に、低空飛行しないと」

「それはそうですけど、無理ですよ。山手線、止まりますよ?」

 確かにそれは一理ある。そう思った以上は、沈黙するしかない。

 しかし、もう一度地図を見てピンと来る。


「アンダーグラウンドを通って来たのでは?」「えぇー」

「ほら、汐留川の河口から入って外堀通りを北上して」「……」

「四ツ谷から地上に出て、ビュンと上昇だよ」「……」

「これならどうだ? 誰にも見つからなかったのも説明が付く」

 目を丸くしている丸井に聞き返すが、さっきより呆れている。


「課長、お言葉ですがぁ、Tuー160は高さ十三メートル、

 幅に至っては五十メートル以上あるんですよ?

 そんなんで時速八百キロでは飛べませんよぉ」

「飛べないかね。アンダーグラウンドは、高さ三十一メートル、幅は百メートルは有るんだろう?」

「だとしてもですっ。それに、『潜水艦』には載らないですっ」

 丸井は冷静に海を『トントン』しながら話していた。


 菅野課長が混乱するのも判る。

 そりゃぁ東京上空に、核攻撃も可能な戦略爆撃機が突然現れて、『自機が安全な高度』へと、一直線に移動中なのだ。

 この後水平飛行になったらウェポンベイの扉が『パカン』と開き、抱え込んでいた『核爆弾』を投下してもおかしくはない。


「じゃぁ、分割したら載るんじゃないか?」

「どうやって組み立てるんですか?」

「んー。アンダーグラウンドで?」

「その組み立ては、結構時間が掛りそうですよ?」

 丸井も否定しながら、それでも心配は心配である。

 何しろ自分が一番最初に驚いて、大きな声を出してしまったのだから。責任を感じてもいる。


「んー。じゃぁ、合体して変形したとか?」

 菅野課長は壊れてしまったのだろうか。両手で『ガチャン』『ガチャン』『ガチャン』と段々大きく合体している。

 それが最後には、見事な『Tuー160』に変身し、大空に飛び立って行ったのだ。


「そんなの、『Tuー160』じゃないですよ」

「じゃぁ、この『Tuー160』は、『嘘』だと言うのかっ!」

 菅野課長が声を荒げてレーダー画面を『ビシッ』と指さす。

 その瞬間、二人の表情がパッと変わった。


 どうやら二人の脳裏には、『本当の答え』がひらめいた様だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ