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ハッカー殲滅作戦(二百七十)

 六千メートル上空とは言え、悠々と飛行するTuー160。

 その周りには一機もいない。帝政ロシアの護衛機はおろか、日本空軍の一機もだ。これは一体、どう言うことだろうか。


 スクランブルが遅れて、東京上空まで戦略爆撃機が到達することなんてあり得るか? あり得ない。

 そもそも領海に入る前から、何なら基地を出発した時から追尾される運命にある。それが『核を積んだ』戦略爆撃機だ。


 そんな飛行機が、突然東京上空に現れた。

 さぁ、貴方ならどうする?


「どうするじゃねぇよ。こんなの、今更どうにもならねぇよ」


 菅野課長は自棄になって吐き捨てる。本当にどうにもならない。

 今頃、空軍はもっと酷いことになっているだろう。


 これで本当に『核攻撃』なんてされたら、『Jアラート』も何も出ていないのだ。

 三千五百万人の東京都民に、一体どれだけの犠牲が出るのだろうか。想像もしたくない。


 菅野課長は、ふとレーダー画面を指さした。

「時速百三十キロで、飛べるものなの?」

「えっ? 無理です」

 即答したのだが、答えた丸井本人も首を傾げている。

 確かにそれは、ジェット機にしてはゆっくりとした速度で移動し続けているではないか。

 聞く訳にも行かないが、それでもまだ『墜落』する様子はない。

 すると丸井が右手を飛行機の形にして飛ばすと、説明を始める。


「あぁ、『対気速度』は速くてもぉ」

 ギュンと鋭く上昇。したかと思ったら、地面に見立てた机上で左手を思いっきり開き、『距離』を示した。


「進んだ『対地速度』に換算するとこんなもん、とか?」

 なるほど。それにしても、随分と『鋭角な三角形』ではないか。


 菅野課長は頭の中で計算を始めていた。

 レーダー画面に描画されてから三十秒。

 それで移動した距離はたったの千メートル程。

 その間に、高度六千メートルへ上昇。

 すると移動距離は、直角三角形の斜めの長さになる。

 六千八十二メートルか。いやそれ、殆ど垂直と変わらんじゃん。


 しかしそれなら、対気速度は秒速二百キロ余り。時速七百三十キロなら、出せない速さではない。

 しかし解せない。地上からほぼ垂直にジェット機が上昇していくことなど、可能なのだろうか。


 菅野課長は渋い顔をすると、右手を顎に、左手を右肘にあてて考え込んでしまった。


『良いか菅野、我々管制官は『常に最悪の事態』を想定するんだ』


 菅野課長は、尊敬する先輩からのアドバイスを思い出していた。

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