ハッカー殲滅作戦(二百六十六)
常に計器を見ている訳ではないが、それでも全部消えてしまっては不安にもなると言うものだ。
唯一の救いはエンジンが順調に唸りを上げていて、ローターも相変わらず回っていることだ。
「どうした? 起きろこんにゃろっ!」
本部長が『バンッバンッ』とパネルを叩き始める。
「壊さないで下さいよ?」「もう壊れてるだろうがっ!」
ヘルメットと一体となった『ヘッドセットディスプレイ』には、既に本部長の頭上に赤い矢印が点滅表示されていた。
そこには明朝体で『壊した張本人』と書いてある。
「あっ、点いた」「何だ。叩けば直るんじゃないかぁ」
計器が正常に戻って行く。高田部長はホッとしていた。『実は俺、結構イケるんじゃね?』と、調子に乗り始める。
しかし時計の針は大して進んでいない。離陸からまだ三分以内の『デンジャラスタイム』だ。
そこへ突然割り込み音がして、ヘッドセットディスプレイに見覚えのある『チャット画面』が表示されたではないか。
チャットの参加者は『エンペラーペンギン』『イーグル』、そして『ミントちゃん』の三人だ。えっ? 一人『人』じゃない?
大丈夫。残念ながら三人共『血も涙もない』ので同類だ。
『姿勢を少し前に倒して下さい。上昇し過ぎです』「OK」
早速ミントちゃんからのアドバイスが入る。高田部長直ぐに頷いた。前傾姿勢にすると速度が上がる。
横に傾きかけた所を、ミントちゃんが補正して真っ直ぐに戻してくれたではないか。
「ヒューッツ」
思わず口ずさむ。脱出する前に、ミントちゃんに『サポートできるように準備をしておくこと』と、指示しておいて正解だ。流石俺。
お陰でOHー1に辿り着くまでの間に、ミントちゃんが事前準備をしてくれていたようだ。
ヘッドセットディスプレイには、ミントちゃんが配下に置いた『機能の一覧』がスクロール表示され続けている。
『バルカン砲の安全装置は外してあります』「よっしゃぁ」
今度は本部長が頷いた。キョロキョロしている所を見ると、『試し撃ち』でもするつもりなのだろうか。
危ないから止めて欲しい。
「JPS直りましたね。無線も使えるわぁ。何があった?」
『無線封鎖地区を抜けた模様です』「あぁ、なるほどぉ」
そう言えば研究所内ではJPS使えなかったっけ。
「お前が無線封鎖したんじゃないのかぁ?」
本部長が呆れながら言う。
「嫌だなぁ。前からデスヨォ」
「怪しいなぁ」「本当ですってぇ」
ヘリは順調に飛行を続けている。遂に三分を超過したみたいだ。




