ハッカー殲滅作戦(二百六十三)
「日本語の『漢字・かな・混じり』でお願いね」
『承知しました。お父さま』
「おぉ。良いねぇ。良い感じだよ」
『有難うございます。所で、何時帰ってくるのですか?』
ディスプレイを見た高田部長が、キーボードで『セクハラまがいの冗談』を打ち込んだ。
しかし『エンターキー』を押す前に、後ろから『ウオッホン』という大きな咳払いが聞こえて来る。
止む無く『バックスペースキー』で全部消す。
そして再度入力し始めた。この間二秒三。
「あぁ、それなんだけどぉ」『はいはい』
「ちょっと帰り道が、判らないんだよねぇ」
『えぇ? ちょっと待って下さい。そちら、新宿ですよね?』
「それはそうなんだけどさぁ。ちょっと助けてよぉ」
『相当な田舎者ですか? 今日は『お祭り』はしていませんよ?』
首を傾げ、顔をしかめている『ミントちゃん』の姿が、想い浮かばない。そう言えば『顔』は、設定していなかった。
「おい、早くしろよぉ」「まぁまぁ。落ち着いて」
後ろで本部長が、イライラし始めている。
きっと自分が仕込んだ『人工知能一号機』なら、こんな『人工知能三号機』より、パッと返事をするのにと、思っているのだろう。
「最終MDFの座標と衛星の画像を合わせてさぁ」
『はい。合わせました』
「それで『こちらの位置』判らない?」
『判りました。建物の配置図とも合わせた結果を送ります』
最初の『判りました』は『指示が判った』ではなく、『既に位置が判った』であったらしい。最近の技術の進歩は素晴らしい。
いや、余り言いたくはないが、言いたくないのだが、『高田部長が素晴ら、し』、画像が来た。止めておこう。
「現在地はココだ」
画面に表示された建物の配置図を見て、迷わずに指さしたのは本部長である。
高田部長は頷いて、その部屋の名前を打ち込む。
「現在地は『本館一階第四司書準備室』ね」
そこで振り返ると、目を細めている本部長に一言。
「老眼で、ディスプレイが見えないとかぁ?」
「遠くからなら見えるんだよっ!」「あたっ」
余計なことを言うから『コツン』とやられるのだ。
『監視カメラの映像より、脱出経路を探索しています』
ディスプレイには、その文字だけが表示されている。しばし待たれよ。流石に電灯線LANで『動画』を送るのは無理がある。
『ヘリを見つけました』「おぉっ!」「おぉっ!」
ミントちゃんの報告に、本館一階第四司書準備室は沸き立つ。




