ハッカー殲滅作戦(二百六十)
「冗談ですってぇ」「当たり前だっ」
プンプン怒りながら、振り返らずに廊下を歩く。と思ったら、ドアノブに手を掛けた所で振り返った。
「俺は『京子一筋三十年』なんだからなっ!」
目を吊り上げ、高田部長を指さして縦にブンブン振っている所を見ると、どうやら本気でお怒りだ。
しかし本部長を『からかい続ける』こと、それより長い四十年。
高田部長の苦笑いに変化はない。むしろこちらも本部長を指さして、縦に振り始めたではないか。
「またまたぁ。もうちょっと『行ってる』でしょうがぁ」
鼻をピクリとさせて『知ってるんだぞぉ』アピールだ。しかし本部長の方は、鼻息をフンと吐く。
ドアを開けると、先に入った。当然、高田部長も後に続く。ドアをそっと閉めた所で、更に追い打ちだ。
「一人で『悶々としていた時期』も含めると、もっとでしょぉ?」
大学時代、高田部長が『京子ちゃんそっくり』と紹介した『良き物』を、擦り切れるまで観ていた癖に。
もちろんその時、『何が擦り切れ』て、ティッシュを『何箱使ったのか』までは、本人の名誉を尊重し、口外しないでおく。
「やかましいっ! そんなの、全部捨てたわっ!」
ダンボールをポイと放り投げた。それには流石に驚きだ。
「えぇっ、あんなに『大事』にしてたのにですかぁ?」
飛んで来たダンボールを笑顔で弾き返しながら、高田部長が首を傾げている。二人は部屋を物色し始めていた。
「大体お前、『本物』と全然違ったじゃないかよぉっ」
目を吊り上げながら、両手で『胸のサイズ』を表しているではないか。それを見た高田部長が、逆に驚いている。
「嘘、『かさ増し』してたとかですかぁ? おっかしいなぁ」
何を根拠に『そんなこと』を言っているのか。残念ながらその理由は、今の所、本部長にしか判らない。
だからだろうか。ニヤッと笑って首を振っている。
「馬鹿。違うよ。『着痩せするタイプだった』ってことだよっ」
流石『本物』を拝んだ上に、『あんなこと』や『こんなこと』を三十年もして来た男が放つ言霊には、自然と『重み』がある。
すると高田部長もニヤケ始めた。顔を斜めにして、本部長をゆっくりと指さしながらだ。
「この、ドスケベ」「うるせぇ」
互いに笑っているのも無理はない。
本部長が『どうだ』と言わんばかりに、机上の片隅にある『パソコン』をポンポンと叩いていたからだ。
「お前の恋人は、『電子計算機』なんだろう?」




