ハッカー殲滅作戦(二百五十八)
「トラップ、自動で戻りやがりましたよ?」
「あぁ、良く出来てるなぁ」
二人は感心して辺りを見回した。どこかに『監視カメラ』でもあるのだろうか。だとしたらまずい。
「何か見えるか?」「いいえ。何も」
しかし、付近を見回してもそれらしい物はない。
本部長は頷く。『その道のプロ』が『何も』と言ったのだ。大丈夫だろう。
「私だったら、あの辺とか、この辺に仕掛けますけどねぇ」
木の上を指さしたと思ったら、今度はちょっと大きめの石を蹴っ飛ばす。『ゴン』と鈍い音がする。
「痛ってぇ」
しかしそれは、本当に石のようだ。足を痛そうにしている。
「何やってんだ。足怪我したら、置いて行くからな?」
呆れた上にマジ顔だ。しかし高田部長は笑っている。
本部長が『俺を置いて行く筈がない』と、高を括っているのだろうか。
油断できないぞ? 本部長は、やるときゃやる男だ。
「安全靴でしたぁっ」
靴を本部長の方に向けて、アピールし始める。それを見て『馬鹿らしい』と思ったのか、腕を縦に振って歩き始めた。
高田部長もその後を追う。
「バレてますかね?」
「知らねぇよ。安全靴履いているかなんて」
まだ呆れているようだ。しかし今度は、高田部長が腕を縦に振っている。
「違いますよ。我々が『仕掛けを触った』ことですよぉ」
確かに『監視カメラ』はなかったが、『センサー』はあるかもしれない。ここまで防犯対策を行っている場所なのだ。
「あぁ。それか。なら『大丈夫』だろっ」
今度は本部長が確信的に言うものだから、高田部長の方が呆れた顔になる。
「何で判るんですか?」
質問すると、後ろの『落とし穴』を親指指して答える。
「だって、『白骨』があっただろう?」
「えぇ。ちらっと」
「トラップに掛かっても、『放置』したんだろぉ?」
「あぁ、なるほど。そういやそうですねぇ」
二人は意見が一致して、笑顔で見つめ合って頷いた。
口にはしないが、ココがどんな施設なのかは見当が付いていた。
そして、どんな奴を『研究対象』にしているのかも。
もちろん自分達は『対象外』である。それも承知していた。
そうなるとやはり、見つかったらどこかに『放置』されてしまうに違いない。早く『お家に帰る』に限るようだ。




