表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
608/1539

ハッカー殲滅作戦(二百四十一)

 何かの破片がヘリの縁に当たって音がする。防弾なのだから、ちょっとくらいなら何てことはない。

 しかし、その何かがあったら困る。だから井学大尉は、慎重にならざるを得ない。思わず再確認する。


「危険です。本当に降りますか?」

「何処でも良い! 早く降りるんだっ!」

 石井少佐は医者ではあるが、こと『ヘリの扱い』関しては素人である。だから今、『どれだけ危険なのか』について、井学大尉とは随分『認識の差』があるようだ。


 しかし、『人心の扱い』については玄人である。

 返事もなく必死で着陸地点を探している井学大尉に、無理を強めに言ってしまったと反省する。


 井学大尉の確認は、石井少佐をおもんばかってのことなのだ。

 ニッコリ笑うと前に座る井学大尉の肩を叩き、一言付け加える。


「地雷原に降りちゃダメだぞぉ?」

「フッ、はいっ。もちろんでありますっ!」

 今度は井学大尉から返事があった。互いの顔は見えないが、笑っているのは判る。


 すると煙の間から、屋上のヘリポートが見えた。それは窓のない丈夫なコンクリート造りの建物でもある。


 例え階下で爆発が起きたとしても、ヘリポートまで吹き飛ぶようには見えない。

 それに本来、この施設に建物を崩壊させる程の『爆発物』なんて、ある訳がないのだ。誰かが持ち込んだに違いないのだ。


「あそこにしましょう!」「よろしく頼む」

 声がして直ぐに、井学大尉は操縦桿をグッと倒す。そして煙の間に割り込んで行く。

 機体を左右に振って進路を巧みに変え、最後は少し機首を上げてスピードを殺す。そして見事な着地を決めた。


 直ぐにキャノピーを上げて振り返る。石井少佐は、もうヘルメットを外して降りる準備を整えていた。


「行くぞっ!」「はいっ!」

 二人はまだローターが惰性で回っている間に降り立った。

 そして状況確認のため、対策本部がある筈の『所長室』へ向かう。


 気が付くとそこには『玉ねぎの腐った臭い』が微かに漂う。

「何だ? ガスか?」

「そうですね。くさっ。この匂いは『ガス漏れ』の臭いですね」

 二人は歩みの速度を緩めた。顔を見合わせて渋い顔をする。


 仮にこの爆発が『ガス漏れ』だったとしよう。しかし、こんなに施設全体に広がり、館内に充満する前に誰か気が付くはずだ。

 夜間ならいざ知らず、今は昼間なのだ。訳が判らない。


 屋上から館内に入る。二人は直ぐに『違和感』に気が付く。

 人の気配がまったくない。その上、非常ベルもスプリンクラーも作動していない。消火栓も消火器も使われた形跡がない。一体。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ