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ハッカー殲滅作戦(二百三十四)

 ジープはとりあえず、赤坂見附口に向かって走り出す。

 前後三人づつの定員六人乗り。後席で牧夫ホークと三好が、琴美を真ん中にして、守るように乗車している。

 助手席の田中が振り返り、琴美に話し掛ける。


「こちら『警護対象』の方達ですね。短い間ですが、よろしくね」

「よろしくお願いします。助かりました。ありがとうございます」

 声の調子が、いつもの琴美に戻っていた。

 親戚のおじさんと電話で話す様に、少し声が高くなっているのが判る。それでも田中には『勝負服』を着た琴美が、とても眩しく見えたのだろう。目を垂らして頷いた。


「いえいえ。もう直ぐですからね。こちら『お父さん』ですか?」

「はい。そうです」「父です」

 お見合いでも始まるのだろうか。牧夫ホークは身構える。


「何てお呼びすれば良いですか?」

 暗くて良く見えないが、田中は牧夫ホークの方を見て話す。

 どうやら警護対象は、『本名』では呼ばないらしい。叫んだら『誰か』が直ぐに判ってしまうからだろう。


「『お父さん』で良いだろ?」「えっ、そうする?」

 運転しながら三好が提案すると、田中はパッと三好の方を見た。すると牧夫ホークは『コホン』と咳払いすると答える。


「じゃぁ『ホーク』でお願いします」

 どうやらこの作戦が終わったら、『カイト』に戻されるのを警戒してか、その前に『ホーク』で定着させようとしている様だ。

 ニッコリ笑って琴美を見たが、琴美はポカンとした顔のままだ。


 琴美は、何て答えようかと考えていた。直ぐに思い付いたのは、もちろん『コトコト』だ。

 しかしそれを、父の前で『披露』する訳には行かない。


「お嬢さんは何てお呼びすれば?」

「『お嬢様』で良いだろう?」「えっ、そうする?」

「あぁ、でも『総帥』と被るかぁ」「だよなぁ」

 何だか勝手に悩み続けていのだが。琴美はクスっと笑って答える。


「じゃぁ『ナイフ』にして下さい」

 言い争いをしていた前席の二人が、パッと同時に振り返る。三好は直ぐに前に向き直って、胸を撫で下ろした。

 どうやら『物凄く意外な答え』に、二人は驚いたようだ。

 琴美には訳が判らないが、二人の動きはちょっと面白い。


 右手の人差し指で、牧夫ホークと自分を順番に指して、努めて明るく笑顔で理由を説明する。


「左が『フォーク』で、私が『ナイフ』です」「えっ」

「あぁ、なぁるぅほぉどぉぉ。判りましたっ!」

 田中から見て、確かに左が『フォーク』で、右が『ナイフ』である。テーブルマナーの通りだ。

 今度は牧夫ホークが驚いているが、それは牧夫フォークから見れば『逆になる』とでも、思っているのだろう。問題ない。


 そんなのどっちでも良いのだ。田中は頷いて前を向く。

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