表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
599/1536

ハッカー殲滅作戦(二百三十二)

 琴美は父からライトの光を浴びせられて、思わず噴き出した。

 悪戯好きの父らしく、変顔をしてふざけているではないか。緊迫感も何もない。


「梅干しあげたじゃなーい」「お父さん、梅干し苦手だしぃ」

 食い物の恨みは『末代まで祟る』と言うが、親子の場合はどうなのだろうか。少なくとも二人は『覚えているだけ』で、『恨んでいる』訳ではなさそうだ。


「でも、たくあんも二枚、あげたじゃなーい」

「シュウマイ二個と交換じゃ、割に合わないよぉ」

 前後を守る三村と三好も、親子の会話を邪魔しないように、クスクスと笑っている。

 目はアンダーグラウンドに向けて、光らせながら。


「シュウマイのグリンピースは返したじゃなーい」「えーっ」

 父の方を指した指を振りながら琴美が抗議すると、父は不満を漏らしつつ、大人しくなった。呪いの呪文でも唱え始めるのか。

 いや、どうやら『フェアトレード』が成立したようだ。


「でもぉ、あっ」「キャッ」「止まってっ!」「大丈夫?」「うん」

 呪いの呪文は中断し、琴美は突然『壁』にぶつかって停止した。

 それは前を歩く三村の背中だったのだが、鍛え上げられた肉体は、華奢な琴美にしてみれば『壁』であることには違いない。


「何か来ます」

 三村の小声と同時に、琴美も前を覗き込んでいた。すると前方からライトが二つ、こちらに向かってやってくる。


「ライトを消して下さい」

 三村が言うので、琴美と牧夫ホークは慌ててライトを消した。後ろの三好は事前に『シナリオ』を聞いていたのだろう。

 慌てることなく周囲を警戒し、それからヘッドライトを消した。

 ところが『消せ』と言った三村のヘッドライトだけが点灯したままだ。辺りをぼんやりと照らしている。


 琴美は前を向いたまま後ろに手を伸ばすと、父がその手を握る。


 すると三村は手でヘッドライトを覆い、辺りを暗くした。

 牧夫ホークは、繋いだ琴美の手まで見えなくなり『良いタイミングだった』と、少し安堵する。


 直後だった。三村が手でヘッドライトを覆ったり出したりして、点滅を始めたのだ。

 どうやら向こうに『味方か』どうかの『合図』を送っている様だ。


 するとそれに呼応して、向こうのライトがチカチカと点滅する。


「迎えに来てくれたみたいですねっ! ここで待ちましょう」

 三村が振り返った。暗闇から浮かび上がった琴美の表情は、恐怖に怯えた表情だったが、その声を聞いてパッと安堵の表情に変わる。


「じゃぁ、全員でライト点けて、合図しましょっかっ」

「はいっ」「判りましたっ」

 言われて琴坂親子は元気良く返事はしたのだが、三好と三村が二人を挟むように近付いて来ていて、戸惑いの表情に変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ