ハッカー殲滅作戦(二百二十五)
足元に転がって来た荒山の頭を蹴り飛ばすと、今度は水平に回転して飛んで行く。まるで、さっき蹴り飛ばした89式のようだ。
違うのは、その方向だけで。
「じゃぁ、行きましょうか」
配達ロボは既に動き出している。高田部長も、結構気が短い。再び『ついてこーい』モードに切り替えて歩き始めた。
「そうだな」
返事をした本部長であるが、歩き始めたのは高田部長とは反対方向だ。それをチラリと確認したのに、配達ロボの行列が止まる気配はない。
本部長は89式を左手で拾い上げていた。そして右手で弾倉を抜き、残弾を確認する。
『フッ』
荒山が簡単に捨てた『理由』を理解する。そして『カチン』と弾倉をセットすると、両手で両端を持って高く振り上げた。
「弾が、空っぽじゃねぇかよっ」(バキッ)
両手を振り下ろす勢いと、下から突き上げた太ももの勢い。その狭間で叩き折って投げ捨てる。これで使えないだろう。
近所に落ちていたベレッタの『右子』を右手で拾い上げると、クルクルと回して右のホルスターに挿す。すると両足を肩幅に広げ、少し右手をホルスターから離して静止した。
目は鋭く『誰か』を睨み付けて鋭い。
次の瞬間、本部長は右子を抜き、目の前に突き出していた。早撃ちだ。瞬きする間の一瞬の出来事だ。
「バーン(カチッ)」
しかし銃声は、文字通り『声』だった。どうやら右子も、残弾ゼロだったようだ。本部長は再びクルクル回しながら、高田部長の後を小走りで追う。
「おーい。弾倉くれよぉ」「えぇーっ」
本部長の要求に高田部長は振り向いたが、それは渋い顔であった。
「無いのかよっ!」「有りますよぉ」
「早くよこせっ!」「えぇーっ」
更に加速して高田部長に追い付いた本部長が、遠慮なくケツから背中の辺りをポンポン叩く。
勝手に弾倉を探し始められた高田部長が、とてもくすぐったそうにしているが、それでもノートパソコンは落とさない。
「こっちですよぉ」「どれだよぉ」
ノートパソコンの方を見ながら、配達ロボの方を指さした。しかしそれは、ゾロゾロ行列しているではないか。どれだか判らない。
すると高田部長も「あぁ、そうか」と思ったのか、急に立ち止まって配達ロボの一団を眺め、首を振って持ち主を探す。
そして、急に笑ったかと思ったら『後ろの焼け跡』を指さした。
「アハハッ。すいません。あっちだったかも?」




