表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
590/1543

ハッカー殲滅作戦(二百二十三)

「ちっ」『パンッ』「おりゃっ!」『カチーン』

 本部長ペンギンのベレッタ『右子』の銃声と、舌打ちと、荒山の叫び声は、ほぼ同時だった。


 銃声が広場に響いたが、硝煙は渦を巻いてあらぬ方向に渦巻く。そして右子は、金属音の後に『カラーン』と床に転がって行く。


 荒山が狙ったのは、89式ではなくベレッタの方だった。

 本部長ペンギンは無情にも、飛んで行ってしまった右子を見向きもしない。名前まで付けて大事にしていたのに、冷たい男だ。


 そんな本部長ペンギンが優先させたこと。それは、89式も遠くへ追いやることだった。


 その時、89式に中指の先端が触れていた。そこから左腰にあるベレッタに手を伸ばすか。いやしない。

 今は温存し、迫りくる荒山の右足の防御に回す。


 荒山が振り上げた右足は、本部長ペンギンの右手に握られていたベレッタを、上に弾き飛ばしていた。

 そのまま振り下ろして、踵落としを狙う。


 その瞬間、荒山は『捕らえた』と思っていた。

 銃を蹴り飛ばすことに成功したのだ。『不意を突けた』と確信していてもおかしくはない。


 しかし本部長ペンギンの『ちっ』は、『弾を一発無駄にする』ことに対しての舌打ちだったのだ。

 ナイフを投げることも予想していたのだ。襲い掛かってくること位、予想の範囲内である。


 だから、荒山のつま先がベレッタを捕らえる前に、既に右手から離していた。

 靴のつま先から飛び出た刃物も、しっかりと目で捉えていたのだ。

 ベレッタが吹き飛ぶ時に『金属音』がしたのはそのためだ。


 荒山の踵落としを両手で受け、勢いを殺した本部長ペンギンは、左足で89式を遠くに蹴り飛ばした。そして荒山の目を見る。

 どうやら荒山も、89式に未練はないようだ。


 荒山は素早く両手で踵落としをガードした本部長ペンギンに驚いていたが、それは表情に出さなかった。

 それよりも、その受けた両手がクッションの様に下へ降りて行くのを感じ、直ぐに停止にかかる。


 跳ね飛ばして、倒すつもりなのが荒山には判ったからだ。


 シュっと右足を元に戻して、今度はそのまま、つま先から横に繰り出した。

 本部長ペンギンの右側から攻撃したら、左腰にあるベレッタに、手を掛ける余裕を与えてしまう。それを警戒してのことだ。


 それに防御に出た左腕を、つま先の刃物で負傷させれば、少なくとも左手で拳銃は使えない。それに、右手で左腰にあるホルスターから拳銃を引き抜くのは、苦労する筈だ。


 本部長ペンギンは、荒山のつま先が迫っているのに、両手を上にした防御姿勢から、そのまま両手を腰まで落としただけだった。

 だから荒山も、今度こそ『捕らえた』と思っている。


 しかし本部長ペンギンが考えていたのは、荒山が『ある程度格闘技ができる』と認識して、ギアを一段上げることだった。


 素早く腰を落とし、左足を真っ直ぐに蹴り出すと、荒山の右足にピッタリと合わせる。


 踝を捕らえていた。荒山の右足を完全に、かつ安全に止めて見せたではないか。これには荒山も驚いた。


『ペンギンの足は、意外にも長い』


 そう思ってニヤつこうにも、そんな暇はない。本部長ペンギンの右拳が下の方から迫っている。荒山は右足を振るのに合わせ、左手を後方に振っていた。がら空きの左わき腹を狙われた格好だ。


 本部長ペンギンは、荒山が最近トレーニングをサボっていることを見切っていた。足を振るのに、腕の力を頼りにするなんて。

 そう思っている。

 第一、腰を入れれば『人』なんて、簡単に殺せるだろうが。


 それでも荒山には『若さ』があった。そして、格闘技の『センス』もあった。それは咄嗟のことだ。


 なんと、本部長ペンギンに支えられた右足を支えにして、左足で飛んだのだ。

 痛恨の一撃が左わき腹に当たったが、死ぬ程ではない。まだだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ