ハッカー殲滅作戦(二百十八)
広場と言っても館内だ。銃撃戦をするには狭すぎる。それでもダダダッと駆け抜けて、一発でも当てれば。
荒山は、配達ロボの陰で必死に考えていた。瞬時に思い付いた作戦を自分で否定する。
見ただろう? さっき角から飛び出した三人がどうなったか。
銃では敵わない? いや、そんなことはない。
ペンギンだって、生身の人間。弾丸を食らえば死ぬ筈だ。
『パパパッ、パパパッ』
連射して威嚇する。やはりペンギンも『拳銃では89式に勝てない』と、思っているのだろう。撃ち返しては来ない。
「それにしても、何だよ。この配達ロボはっ」
どう見ても『只の配達ロボ』なのに、いつから『自爆装置付き』になったのか。そんな話は、聞いたことがない。
広場には配達ロボが、壱、弐、参、おいおい。まだ九機もあるじゃないか。まさか、これ全部『自爆装置付き』じゃないよな。
荒山は広場に散らばる配達ロボの数を確認すると、再び考える。
果たしてこのまま、さっきのように『配達ロボを攻撃』して、勝てるだろうか。誘爆するかもしれないし、いや、するだろう。
そうなると、良くて『引き分け』つまり、俺も死ぬ。
もう一度、配達ロボの位置を確認するために、配達ロボの陰から覗き見ようとした。その時だ。
キラリと光る『何か』が見えて、荒山は顔を引っ込めた。
次の瞬間、配達ロボの肩口を弾丸が通り過ぎて行く。
荒山は、配達ロボが『盾』にもならないのかと、一瞬迷う。しかし直ぐに、それは違うと否定する。
さっき爆発した時に、金属のボディーが残っていた。
ちらっと『弾の跡』を見る。白く、つやつやのプラスチックが、弾丸でこそぎ落とされた所だけ黒くなっていた。
その下には、金属のボディーが見える。
つまり、弾が通り過ぎたのは『薄皮一枚』と言うことだ。ペンギンにも拳銃では『貫通不可』と、認識しているのだろう。
ならば、盾としては十分だ。しかし、それでも拭えぬ不安とは。
それに、このまま隠れていても、どうにもならないではないか。
今度は反対側に、服の下から空の弾倉を突き上げて、シャツの裾をゆっくりと出してみた。
『パンッ』『カラーン』
すると銃声がして、シャツに穴が開くと、弾倉がはじけ飛んで転がって行く。そして、配達ロボの表面には『黒い焦げ目』が付いた。
「マジか。正確に狙ってやがる」
荒山は、手榴弾かスモークが欲しくなっていたのだが、あいにく『持ち合わせ』がない。どうしたら良いのかなんて、判るものか。
この状況が、かなりまずいことだけは判る。




