ハッカー殲滅作戦(二百四)
デルタとイプシロンの面々も、新しい情報を得て動き始めていた。
建物の外観を見ると、中央に大きな『口』の形に建物があり、その一遍から櫛の歯状に建物が伸びている。その櫛の歯の一本が地下牢だったようだ。端的に示せば『四角いウニ』と言った所か。
現在地は、中央の角を占拠している状態だ。
「なるほど。判った。では、こちらも移動する」
無線を切り大きく頷いたのを見て、『いよいよか』と身構える。本部長が立ち上がって宣言する。
「ミントちゃんと連絡がついて『情報破壊工作』は完了した」
「おぉ早いなぁ」「さすがイーグル」「ミ、ミント? 誰?」
一息ついてニヤリと笑う。ざわつく隊員が見たその笑顔は、『こんな所に閉じ込めやがって。ざまあみろ』を表していると理解する。
「アルファとベータが、ガス管と電気線を使って、建物全体の爆破を画策している最中だ」
新しい情報が机に投影されていたが、そこに示されたアルファとベータの付近を、ぐるりと指で囲む。
「こちらは、そのサポートをしよう」「どのようなものでしょうか」
本部長に質問したのは、イプシロンチーム隊長の五木である。すると牧夫は直ぐに判ったのか、先に答える。
「ガス漏れ検知の『妨害』ですね」「その通りだ」
ビシっと人差し指を牧夫の方に指した。
「ガスの供給システムはだなぁ」
そう言いながら、机上の図面に向き直る。一同はその指先に注目。
「複数の『検知システム』から構成されていて」
図面上の『小さな小部屋』を、人差し指でトントンと叩きながら、ガスの経路を示している。
兵士達は図面上にある『機器名』を、頭に叩き込んで行く。
「どこかで『ガス漏れ』を検知すると、元栓が閉まる」
最後にトントンと叩いたのは、外部から入って来る『ガスの元栓』だ。兵士達は『なるほど』と思いながら質問をする。
「電気を切れば良いのでしょうか?」「残念ながら、そうではない」
警報を電気で鳴らしているのならば、その電気を切れば良い。その発想は正しいのだが、民生品の安全担保はそうなってはいない。
「電源を切ると、元栓が閉まるのですよね」
確認を求めたのは牧夫だ。一斉に兵士の視線が集まったが、本部長の方に視線を戻す。
「その通り。電気の力で『開』になっている。切れると止まる」
図面上の元栓からガス管を辿り、小部屋を人差し指でトントンしながら現在地まで戻って来た。兵士達も納得して理解する。
しかしそうすると、一体どうすれば良いのだろうか。
「あ、非常用に切り替えですね」
沈黙を破って、再び牧夫の声。
兵士が一斉に回答に注目し、そしてゆっくりと本部長の方に視線を移動させる。
すると本部長が、満面の笑みとなって頷いた。




