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ハッカー殲滅作戦(二百三)

「おい、もうダメだって。逃げた方が良い!」

「もうちょっとだって。この十年の研究成果があるんだぞ?」

 端末の前で忙しく操作をする白衣の二人。研究員のようだ。


 その日は、いつもと同じ一日だった。朝出勤して、昼飯はパンをかじりながらデータを纏めて、午後は指定された実験をする。

 研究している内容は物騒だが、日常は穏やかなものだ。

 それが突然、どこかの誰かが突入してきて、崩れ去ったのだ。


 きっと『雨耐性の研究』に反対する一派なのだろう。


「こんな研究、意味ないだろうがっ! 俺は行くぞっ!」

「意味なくはないだろう。『雨耐性』は日本人に必要なんだっ!」

「屋根あれが済むだろうがっ! こんな所で死んでたまるかっ!」

 カバンも放り投げて、慌てて部屋を出て行ってしまった。


 さっきから銃声と思しき音が響いている。本物の銃声なんて、聞いたことがない。それでも、多分味方だろう。

 ここは陸軍の研究所。そんな所に飛び込んで来て、無事に帰れる訳はない。ハチの巣にされて終わりだ。


 専用のハーフボックスで出勤する。それで関係者のみが通過できるゲートを、自動認証して潜り抜けた。にも関わらず、銃を持った兵士の前で再度認証が行われる。とても厳重な警備だ。


 それに、建物自体は繋がっているが、建物の入り口にも『守衛』という名の兵士が立っていて、身分証の提示と認証が必須。

 手にしている銃にだって、実弾が入っているに違いないのだ。


 だから、配達ロボを使って書類や荷物の運搬を行っている。

 距離が近いのに建物を移る度、いちいち身体検査なんてやられては、面倒臭いではないか。必要最低限にしたい。


 それに、一説によるとだ、立ち入り禁止の中庭には、地雷まで仕掛けられているとか。いないとか。誰も証明したことはない。

 それでも陸軍が『立ち入り禁止』と言っているのだ。誰も行かぬ。

 そう言えば『匍匐前進だからOK』と、カメラ片手に侵入した馬鹿が死んだらしいが、警告看板は『立ち入り禁止』のままだ。


 男は研究成果のファイルをバックアップしようと思ったら、何故か既に開始されていた。しかも、一日おきに使い分ける筈のバックアップ先に対し、何故か両方同時に行われている。


『何やってんだよ』と思う。サーバ室は正と副の二つある。きっと副側のビビリだ。向こうにも銃声が聞こえているのだろう。

 何度も言うが、ココは陸軍の研究所。大丈夫。落ち着け。


 男の手は震えていたが、まだ五感は正常だ。

 だから後ろの扉が開いたのに、振り返りもしない。それが家路を流しながら帰って来た『配達ロボ』だと、判っていたからだ。

 その内、配達結果を自動報告して、勝手に充電し始めるだろう。


「『NJS』だぁ? 何だこのファイル。ここ十年の研究成果は?」

 男が思い当たる『NJS』は一つしかない。ふと振り返って覗き込んだ配達ロボも、『NJS』からやって来た。それのこと?

 目の前で配達ロボの自動報告が始まり、赤ランプが緑に変わった。

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