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ハッカー殲滅作戦(二百二)

 アルファチームの市原は、タブレットに『ミントちゃん』というフォルダが、勝手に作成されていることに気が付いた。

 さっき無線で『エンペラーペンギン』が無事、合流したことは知っている。だからその『強い決意』を叶えるべく、給湯室のガス管を辿ってこの辺一帯を捜索している。そんな時だったのだ。


「ちょっと、援護頼む」「はい」「はい」

 自ら物陰に隠れ、二人の護衛に指示を出す。一人は無線係だ。


 市原が思い浮かべた『ミントちゃん』は、関連会社のNJSが開発した『自立攻撃型ドローン』の愛称だった気がする。

 それが一体何をしてきたのか。そう考えながらファイルを開く。


「こっ、これは一体。どうやってこんなものが」

 直ぐにピンと来た。これは『この建物の図面』だ。何だぁ? 赤い線が『ガス管』だとぉ? それで黄色い線が『電力線』か。


「無線貸してくれ」「通じますかね」「急ぎだ」「はい」

 雑音が酷かった無線だが、いつの間にかクリアになっている。


「アルファワン、さっきの『第八倉庫』の中に、ガス管が来てる」

『こちらアルファワン、第八倉庫了解。オーバー(クキュ)』

「アルファツー、『第七実験室』から天井裏、ガスの本管あり」

『こちらアルファツー。第七上に本管了解。オーバー(クキュ)』

 急に始まった無線での的確な指示に、無線係が驚いている。


「部隊長、急にどうしたんですか?」「図面が来たんだ」

 監視をしながら、チラチラと市原の方に振り返っている。


「えっ、こんな時にメールで、ですか?」「いや、直接」

 パッと市原の方を向いて止まった。それに対する市原の答えは短く、そして苦笑いだ。無線係は再び監視に戻る。


「何ですかぁ? 直接って。意味判んないっす」

 前を向いたまま、軽く首を横に振っている。それもそうだろう。

「俺もだよ。どうやらハッキングされて、ファイルを作られた感じ」

 フッと吐いた鼻息が、無線係の首筋に掛かったのかもしれない。

 直ぐに振り返った無線係の目が、『意味判んねぇ』のまま、ロックされてしまっている。


「何だこれ? 『配達ロボへのオプション設定方法』だと?」

 素っ頓狂な声で市原が言ったものだから、再び前を向いていた無線係と、もう一人の護衛兵士も振り返ってしまった。


 護衛の兵士が周りをキョロキョロして、誰もいないのを確認すると、後ろ向きに下がって来て、市原のタブレットを覗き込む。


 三人が見つめるタブレットには、『オプションの取り付け方』を示す動画が再生されていた。これは、とても有用な情報だ。


「これさぁ、さっきその辺、ウロウロしていたよな」

「えぇ。働き者でさぁ。こんな時でもねぇ」

 三人は短い動画を見終わって、ニヤリと笑う。


 その中でも、一番良い笑顔になっている市原が、再び無線のマイクを握り締めた。


「全員に告ぐ。三十秒後に動画を送る。以上。三十、二十九」

 今頃索敵をしている隊員は安全な所に隠れ、電子スコープを装着している筈だ。

 そこに今見た『オプションの取り付け方』動画を流すことで、全員がその手順を知ることが出来るだろう。


 実は同じ頃、ベータチームでも同様の連絡が飛んでいた。


「ベータスリー、東の階段下に『マンホール』がある」

『こちらベータスリー。東階段に急行する。オーバー(クキュ)』

 市原は建物の図面を見ながら、有用な情報と隊員の位置を照らし合わせている。


『こちらベータワン。ベータ応答願います。オーバー(クキュ)』

「こちらベータ。オーバー」

 突然来たベータワンからの連絡に、直ぐに応答した。


『第三機械室に『配達ロボ』の充電ターミナルを発見。こちら『ホームポディション』か? オーバー(クキュ)』

 急いで市原はタブレットを確認する。

 ベータワンが報告してきた第三機械室は、さっき報告のあった建物の位置関係から、図面上この角にある『機械室』であろう。


「こちらベータ。残念、第三に通電なし。オーバー」

 タブレット上の図面に、残念ながら通電を表す黄色い線がない。

『ベータワン了解。(シューシュー)次へ向かう。オーバー』

 スプレーで『×印』を描く音が『残念』とも『無念』とも聞こえる。それでもさっきよりは、かなり探索が楽になった。次だ次。

 もう直ぐ『突破口』が、見つかるに違いない。

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