ハッカー殲滅作戦(百九十六)
三番地下牢の扉を『全開放』され、救護対象者の捜索を切り上げたガンマチームが、付近を探索していた最中だった。
突然、本部長からの指示で、防火扉を閉めながら移動した。きっとそこで、前線基地を作るのだろう。
拠点を確保した上で、無線を飛ばしす。
「こちらガンマ。ポイントワンに到着。閉鎖完了。オーバー」
『こちらエンペラーペンギン。閉鎖了解。拠点を確保せよ』
やはり拠点確保だ。リーダーと無線係は、笑顔で頷いた。
「拠点は確保済。オーバー」
『そっちにイーグルが向かった。イーグルの指示に従え』
するとリーダーと無線係の顔が、微妙な顔に変わる。
「イーグルの全権了解。オーバー」
そしてリーダーは無線のマイクを置いた。
無線からの声が聞こえていたのだろう。近くにいた兵士の顔も曇り、ソワソワし始めている。拠点に、微妙な空気が漂い始めた。
「イーグルって、誰ですか?」「知らん」
「凄いんですかぁ?」「エンペラーペンギンの『左腕』らしいぞ」
「左腕って。大丈夫なんですかぁ?」「だから知らんって」
コソコソと、小さな声が拠点の中を渦巻いている。
「どうもどうもぉ。ガンマチームの皆さぁん」
見覚えのある兵士、デルタチームの二人だ。その二人を従えて、堂々と背広の男が入場してきた。
「全権の、イーグルデース」
まだ『全権』なんて指示を受けていない。ちょっと先に言ってみただけだ。もし全権になれたなら、それは楽ができる。
もし、なれなかったら? そのときは手を抜くだけだ。問題ない。
右手を挙げて拠点にやって来た高田部長を見て、ガンマチームのリーダーが走り寄る。
「ガンマチーム・リーダーの三河です。ご苦労様です」
敬礼して挨拶した。戦闘中とは言え、それ位の余裕はある。
すると高田部長には、ピンと来るものがあった。ニッコリと笑うと、三河の肩をポンポンと軽く叩く。
「本部長に何て言われたか、それはそれだ」「はいっ」
「今から同じチームだ。生きて帰ろう」「よろしくお願いします」
「俺も、全力を尽くす」「はいっ。我々も、全力で付いて行きます」
人間笑顔で語り合えば、腹を切らなくても、いや、割らなくても、分かり合えるはずだ。二人は笑顔で握手した。
ガンマチームの隊員達は、優しい上官が現れてホッとしていた。
それは佐伯も同じだ。力強く握りしめられた手が、それを物語っている。しかし佐伯には、一つ忘れていることがある。
それは、この中の誰も『高田部長の全力』を、見たことがない。という事実である。
「さて。じゃぁ、最初のミッションと行きましょうか」
パチンと手を叩いて、高田部長が真顔になった。




