ハッカー殲滅作戦(百九十五)
高田部長はとりあえず、近くに来ているであろうガンマチームと合流することにした。
拳銃は本部長に取り上げられてしまったので、今は丸腰だ。いや、代わりに『軍事用』のパソコンがある。
「そりゃっ」
それをブーメランの様に放り投げて、姿勢が崩れた所にとどめに正拳突き。一瞬で一人倒した。パソコンを拾う。
何だか『一発しか弾がない拳銃』のようであるが、仕方ない。
今持っている武器が、これしかないのだから。
相手の武器を奪えば良いのに。そう考えるのは、あながち間違いではない。ただ今回の場合、相手が悪かった。
突然飛び出て来たので、思わず攻撃してしまったのだが、白衣を着ているので、ただの研究員のようだ。ナムナム。
「容赦ないですねぇ」「仕方ないだろうがぁ」
そう。仕方ない。だって高田部長は軍人じゃないし、それに、軍事訓練だって受けてない。
「でも、今のは良い反応でしたよ」「褒められちゃった(テヘッ)
褒められて伸びるタイプなのだろうか。調子こいて手で頭を押さえると、舌を出して笑う。
それでも強いて言えば、実家が『空手道場』というだけだ。
「そう言えば、ご実家が空手道場でしたっけ?」「そうそう」
高田部長が本部長と並び称される、いや、危険視されているのを兵士は思い出した。
きっと、本部長並みに、強いに違いない。
「お父さまが空手の師匠?」「ちがう、ちがぁう」
渋い顔をして右手を横に振り、咄嗟に否定された。それでも重たい『軍事用』パソコンを、軽々と振っているのだ。
それはもう、何だかんだ言って、結構鍛えていたに違いない。
「えっ? じゃぁ、出稽古でもしてたんですか?」
「してないよぉ。親父は空手の師匠じゃなくて『師範』ね。師範」
「あぁ。そっちですか。すいません」
言い間違えかと思って、兵士は苦笑いで頷いた。
「ほらぁ、雪国に住んでいる人がさぁ、良く言うでしょ?」
「はぁ。何をですか?」
唐突に高田部長から聞かれても、兵士には判らない。
すると調子に乗った高田部長が、誰かの真似をしながら、嫌みっぽく言い始める。
『俺、スキーは、あんまり上手じゃないんだよねぇ。ていうか苦手』
「あぁ。いますねぇ。そう言う人」
兵士は同期の『佐々木の顔』を思い浮かべると、頷いて笑った。
陸軍は訓練でスキーもするが、吉野財閥自衛隊の皆さんも、スキー訓練をするのだろうか。
パラシュート付けて『富士山滑降訓練』とか、やりそうで怖い。
「判るぅ? それと同じ同じぃ」
兵士はちょっと首を傾げて考える。佐々木が上級者コースのこぶ斜面を、華麗に滑って行く姿を思い出して、納得することにした。




