ハッカー殲滅作戦(百九十四)
本部長の顔が、パッと明るくなる。目も輝いた。
「イイネッ! それ、採用」
そうして作戦を検討している間、ずっと黙っていた高田部長の方を向くと、ニッコリと笑った。
「ちょっと行って、調べて来い」「えぇぇっ、私なんですかぁ?」
そう言いながら牧夫の方を見たが、『俺の設計じゃないし』とばかりにソッポを向いて、口を尖らせる。
高田部長は、自分で『美味しい所』を独り占めしたのを反省しつつ、今度は牧夫にもやらせるかと思う。
配送ロボが集めた『ビッグデータ』を解析し、『新しい何か』を開発するには牧夫の方が得意だ。
しかし今はこの銃撃戦の中を、彷徨う配達ロボを求めて、自分も彷徨わなければならない。なんてこった。
「ちょっとそれ貸せ」「何をですか?」「パソコンだよぉ」
牧夫のカバンに手を向けて、上向きに『クイクイ』していたのに、判らないのだろうか。勘の悪い奴だ。
「どれですかぁ?」「ペンギン印の奴に、決まってるだろうがぁ」
ちょっとイライラしながら強めに言うと、『やっぱり』な顔をして、A4サイズの『軍事用』パソコンを差し出した。
「パスワードは?」「えっ? あぁ『886384』です」
皆が居る前でパスワードを聞いて来るなんて、と思いつつも、今は一秒でも早く、やることやって、逃げないといけない。
それは理解しているつもりだ。ここは、協力しないと。
そんなつもりで、一旦躊躇した牧夫だったが、思い直してパスワードを伝える。
するとその想いが、高田部長にも通じたのだろうか。
「はぁ? 何その数字。奥さんの誕生日じゃないの?」
おや? ちょっと銃声が聞こえたのもあるが、聞き直された。牧夫は苦笑いで、直ぐに手を横に振る。冗談じゃない。
そんなの、全然『パスワード』にならないではないか。パスワードはバレない為にあり、牧夫は『毎日変える派』である。
「違いますよぉ。それは、全員知っているでしょうがぁ」
すると不思議なことに、その場にいた全員が頷く。
「じゃぁ、何なんだよぉ」「奥さんの『スリーサイズ』ですよぉ」
サラッとバラシてからの『ドヤ顔』。どうやら牧夫は毎日、可南子のスリーサイズを確認しているらしい。
「おぉぉ」「結構デカいな」「88だったのかぁ」
沸き上がる声を聞いて、牧夫も苦笑いになった。
すると、高田部長も苦笑いで牧夫を指さして、悪戯っぽく言う。
「自称は『90・59・85』だ。知らねぇぞ?」「えっまじで?」
もう一度ちゃんと聞き直そうとしたのだが、もう手を振って、護衛の兵士と一緒に部屋を出て行ってしまった。




