ハッカー殲滅作戦(百九十二)
どうやら攻め込んだ人数の割に、施設の方が広い様だ。
そして、何故か施設を守る警護の者が少ない。だからだろう。ほぼ奇襲攻撃となって、制圧した範囲が広くなってしまっている。
「どこから突入したんだ?」「こちらからです」
本部長が隊長の方を見て質問する。すると現在地とは、かなり遠い所を指さした。そこは地図上に『道路』がない。
「箱で来たのかぁ?」「はい。そうです」
一瞬目尻がピクリと動く。どうやら、お気に召さなかったか。
しかし、どこに連れていかれたのか判らないから、ハーフボックスの自動運転で来たのだ。やむを得ずなのだ。
「待機しているのか?」「いいえ。回送しました」
しかし本部長に、それは通じない。しかも、乗り捨ててしまったとは如何に。渋い顔になって叱りつける。
「足は? 撤収はどうするんだ?」
軍隊にあるまじき行為だ。お家に帰るまでが作戦だって、校長先生に言われなかったのか? と、問いたい。問い詰めたい。
しかもココは、本部長が閉じ込められていた地下牢を中間地点とすると、ハーフボックス乗り場とは、丸っきりの反対方向ではないか。
隊長が心配そうな顔をして、机上を指でなぞり始めた。ハーフボックス乗り場付近を、細長く丸く囲ってから質問する。
「戻って制圧しますか?」「もう遅いっ」
秒で却下された。しかも、『煩い。邪魔するな』とでもばかりに、腕で薙ぎ払われる。
「ヘリは? いや、車は? 手配しているのか?」
一旦『ヘリ』と言ってから『車』と言い直したのは、どう見てもココが、ヘリを何機も飛ばして来れる場所じゃないからだ。
「現在地が不明でしたので、これからの手配となります」
隊長が、ダラダラと流れる汗を拭かずに答えた。
「またそれかっ! こいつら全員死ぬぞっ!」
誰も知らないが、本部長の怒りはごもっともだ。
そしてそれが『どういう失態』だったのかを、その場に居合わせた全員が理解する。隊長を見つめて、渋い顔になった。
何故なら『こいつら』の中に、琴坂親子も含まれていたからだ。
そこへ、伝令が飛び込んで来た。
「報告。イプシロン合流します。全員無事」「良しっ」
本部長は一旦ホッとする。すると直ぐ後から、ドヤドヤと兵士がやって来る。
しかし室内を見て、リーダーは直ぐに状況を把握したのだろう。ハンドサインで指示を出すと、自分だけが部屋に入った。
それでも部下は落ち着いたのか、笑顔で弾倉を交換している。
「現在地が判ったんですね?」「あぁ。やっとだ」
イプシロンのリーダーが机の傍にやって来て、笑顔になった。




