表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
555/1543

ハッカー殲滅作戦(百八十八)

 ムッとしながらの発言に、高田部長イーグルは琴美の方を指さして諭す。

 すると、本部長ペンギンもそれに気が付いたのか、ニッコリと笑った。直ぐに言訳をする。


「昔、毘沙門天ビシャーがさぁ、俺の車でチビったんだよね」

「それで『ビシャーさん』、なんですかぁ?」

 苦笑いして琴美が首を傾げる。すると本部長ペンギンも苦笑いになって、両手でハンドル操作を始めた。


 そこにハンドルは無いが、気分は『地雷原突破』である。


「そうなのよぉ。『折角の新車』だったのにさぁ。台無しだよぉ」

 ちょっと略されてしまったが、正確には『折角敵から鹵獲した新し目のワズ』ということだ。


 しかし琴美には、そんな車種までは判らない。思い浮かんだのは、『多摩川でのBBQ』で見掛けた『白いミニバン』だ。

 もちろん、車種もメーカーも判らない。判るのは色と形だけだ。


「でも『ビシャー』だと、『結構出てる感じ』、しませんかぁ?」

 悪戯っぽく笑った。何でそうなったのかは知らないが、その『ビシャーさん』も、付き合いが長いのだろう。

 BBQの時に、居たお覚えはないけれど。


「いててっ、そんなに漏らしてないですよぉ。酷いなぁ」

 あらぬ方向からの声に、一斉に振り返る。いや、そこの兵士、そう。あなたです。

 あなたはもっと早く、気が付かないとダメでしょう。


「大丈夫ですか?」「大丈夫じゃないよぉ」

 かつての部下が、かつての上官を助け起こす。いや、まだ死んではいなかった。これからだ。

 ほら、本部長ペンギンがコツコツとやって来る。


「おい毘沙門天ビシャー、良く俺の前に現れたなぁ」

 兵士が持ち上げようと難儀している『鉄の扉』を、軽く蹴っ飛ばした。するとガランガランと軽い音がして、廊下を転がって行く。


「もう、陸軍は辞めたので、勘弁して下さいよぉ」

 急に布団を剥がされた小学生のように、情けなく両膝を曲げ、両腕を本部長ペンギンの方に伸ばして顔を背けている。

「じゃぁ、今は何やってんだ?」

 毘沙門天ビシャーがそう言う割りに、全身迷彩服なのに合点がいかない。それに、さっき『隊長』なんて肩書まで聞いたぞ?


「吉野財閥自衛隊の近衛ですよ」「へぇぇ。お前がねぇ。チッ」

 関連会社の社員、しかも民間人ならば、ぶっ殺すのはダメだろう。

 軽く舌打ちをして、私怨を仕事に持ち込むのは止めにする。


「じゃぁ、全員に伝えろっ!」「はいぃっ!」

 突然、本部長ペンギンが大声で吠える。それは、ペンギンの鳴き声に非ず。


「完膚なきまでに破壊せよ。以上だ」「承知しましたっ!」

 そう。正式名『エンペラーペンギン』による『鶴の一声』なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ