ハッカー殲滅作戦(百七十九)
「それは別に構いませんが、琴美は何処ですか?」「何処なの?」
牧夫が心配そうな顔になって高田部長に聞く。すると、当然のように隊長にスルーする。
「それが、判らないんですよぉ」「だそうです」
今度は逆ルートで、高田部長が牧夫に。
「髪はコレ位で、身長はコレ位で、顔はこんなデス」
全部具体的な数値なしに身振り手振りで説明し、最後は自分を指さしてニッコリ笑う。
「いや、どちらかと言うと、可南子似だよ」
「えぇー。そうですかねぇ」
再び牧夫と高田部長の言い合いに。
「いや、どちらに似ていても別に良いのですが」
今が『どういう状況』なのかを、理解していないのだろうか。会社の立ち話じゃないんだから、パッパと進めて欲しい。
「どんな服装だったか、判りますか?」「判りません」
隊長の質問に牧夫は即答する。隊長は驚いて聞き直す。
「えっ、どうしてですか?」「だって、寮生活だし」「あぁ」
そして困った顔になった。隊長も、顔は判っているのだが。
地下牢は五つあって、現在捜索中である。本部長の所在が明らかになったことを、さっき無線で連絡したので、『慎重な捜索』は、もう不要だろう。
しかし、『無線で伝えた』からだろうか。何だか『敵さんの攻撃』が、激しくなっているとのこと。
やはり『本部長の死守』を、強く感じられる。
隊長は無線係を呼び寄せると、マイクを手にした。
「こちら隊長。順番に保護対象者『KK』の所在について報告せよ。オーバー(クキュ)」
『こちらアルファー。未確認。オーバー(クキュ)』
『こちらベータ。未確認。オーバー(クキュ)』
無線の応答が直ぐに帰って来たが、どうしたのか続きが来ない。
「ガンマどうした? 応答せよ。オーバー(クキュ)」
隊長が心配になって、第三チームをコールする。
『こちらガンマ(パパパッ)第三地下牢は(バキューン)全開放されて(チュンチュン)いるので、未確認です(ドーン)大丈夫かっ』
雑音が凄い。ガンマチームは、別の所で奮戦中のようだ。
「そうだった。了解。第四、えーっと」
『イプシロン未確認(馬鹿、デルタが先っ)オーバー(クキュ)』
『おいおい。こちらデルタ。未確認。オーバー(クキュ)』
全てのチームからの無線報告を受けて、隊長は渋い顔になった。高田部長と牧夫も渋い顔だ。
「隊長、ギリシャ文字位、ちゃんと覚えておけよぉ」
嫌みを込めて高田部長が忠告する。
「いやぁ。ちょっと格好付けてみたんですけどねぇ。失敗かな」
言われた隊長は苦笑いで頭を掻く。いつもは『いろは』だったのに、今日に限って横文字にするからそうなるのだ。反省。




