ハッカー殲滅作戦(百七十八)
「牧夫もさぁ、『娘を持つ親』として、どう思う?」
突然の質問に、牧夫は困惑する。どうしてそこで『そんな質問』なのだろうかと。
「家の琴美は、世界一可愛いですけど?」「あぁ。はいはい」
親馬鹿にも程があるという体で、高田部長は軽く流した。牧夫は、ほっぺたを膨らませて怒る。
高田部長も『詳しい事情』を説明していなかったと反省はするが、それはおくびにも出さない。
「なぁに、言ってくれちゃってんですかぁ」
牧夫の怒りも判る。ということにして、高田部長は『まぁまぁ』と両手を上下に振る。
「いやね。もしもだ」「はぁいぃ」
切り出された話を、牧夫は仏頂面で素直に聞いている。
「娘に『パパと結婚するのぉ』って言われてだ」「えぇ。はいはい」
ちょっとおどけたモノマネを見ても、その表情は変わらない。
「大きくなって『男と駆け落ち』したら、どう思う?」「はぁぁ?」
質問の意図が判らないかのように、牧夫は首を傾げる。
それを見て、高田部長は薄笑いで更問いをぶつけた。
「娘は、やっぱり『裏切り者』かね?」
「全然? えっ、誰を裏切ったんですか?」「おぉぉ」「鈍いぃ」
牧夫は秒で答えたのだが、顎を突き出して、不思議そうな顔をしている。その後は首を左右に傾け始めた。
「裏切り者とは言わない感じ? 駆け落ちしてもだよ?」
「いや、娘は娘だし。そりゃぁ喧嘩もするでしょうが。娘ですよ?」
目をパチクリして、相変わらず質問の意図が判らない感じだ。
その場に居合わせた一同は、安堵の表情になる。
と言うことは、この場に富沢部長を連れて来て、いつもの様に『パパ、助けに来たわよ』とでも言ってもらえれば、万事丸く収まる『ハズ』だ。多分。
「どうする?」「どうしましょうか?」「呼ぶ?」「うーん」
まだ質問の意図が判っていない牧夫を放置して、高田部長と隊長が相談を始めた。
呼ぶにしても、誰かが呼びに行って『理由を説明』し、速やかに『ハーフボックスに放り込む』必要がある。
考え始めて、高田部長は思い出す。ここが『何処だか判らない』ことを。自動運転恐るべし。
連れて来るには、牧夫が富沢部長を迎えに行って理由を説明し、その上で、嫌がる朱美と三人で乗り込んで来ないといけない。うーん。ちょっと無理かも。
「そう言えば、家の琴美も『この辺にいる』って、話でしたよね?」
放置されている牧夫が、構って欲しくて言ったのか、それとも、世界一可愛い愛娘を心配しての言葉なのかは判らない。
しかし、その場に居合わせた一同は、安堵の表情になる。
「イイネッ(パチンッ)! 琴美ちゃんに行かせようっ!」
指を鳴らした高田部長が叫ぶ。本部長は『歴史散歩BBQ』でも琴美を可愛がっていた。孫同然に。




