ハッカー殲滅作戦(百七十三)
「お前、今日パソコンは、それしか持って来てないの?」
「嫌だなぁ。『ある』に、決まってるじゃないですかぁ」
それを聞いて渋い顔になったのは、すっかり『護衛』になってしまった兵士である。
「何台持って来てるんですかぁ?(パパパッ)」
撃ちながら牧夫のカバンを見ているが、そこまで大きなカバンではない。あっても、あと一台だろう。
「ジャーン。正解は『十台』でしたぁ」
カバンのサイドポケットから、とりあえず一台を引っこ抜く。それは『スティック型』のパソコンだった。
「何だ(バンッ)」「何だとはなんですかぁ」
突然切れた高田部長と、牧夫の口論が始まって兵士は焦る。味方同士、仲良くして下さい。
あっ、高田部長は『護衛対象』になってないので、死んでしまっても大丈夫です。はい。(パパパッ)
「だってお前、それパソコンがないと(バンッ)意味ないジャン」
口を尖がらせて理由を言うが、牧夫も引き下がらない。
「パソコンなんて、きっと『何処にでも』あるでしょうがぁ」
「まぁ。まぁ。喧嘩しないで。(パパパッ)判りました」
こんな目立つ場所で立ち話をしているから、さっきから忙しいではないか。多忙な兵士を見て二人は黙った。
「判りました。そうですよね。パソコン探しに行きますか」
利用目的も判らずに、一応そう言ってみただけだ。それより、ここを移動したい。
「本部長探すのが、先ではないですか?」「そうだな」
のんびりとした口調で牧夫が言い、それに高田部長も同調したものだから、兵士はちょっとムッと来ていた。
「じゃぁ、移動しましょう! とりあえず、あっち!」
グイッと押されて三人は移動し始める。そして、隣の建物の階段を降りて行く。どうやらそこも、さっきまで激戦だったらしく、職員と思しき者が倒れていた。
兵士が慎重に『クリア』を確認しているのに、その横を高田部長と牧夫が追い越して行く。
仕方なく兵士は、一番後ろを確認しながら行くことにする。
「あぁ。どもぉー」「お疲れ様です。無事でしたか」
監視所の中に、既に『お仲間の軍人』が陣取っていて、拳銃をヒラヒラさせて挨拶する高田部長に会釈している。
そしてその後に牧夫、最後に兵士が合流した。
そこだけ見れば、見事な連携。まるで『チーム』のように見える。
「開かないの?」「そうなんですよぉ」
困っている隊長と高田部長が話している。するとそこへ、笑顔の牧夫が割り込んで来た。
「全部、開けちゃえば良いのでは?」




