ハッカー殲滅作戦(百七十一)
足を引きずっている人に手を貸すこともなく、二人は階段を再び上がって行く。
するとそこには、行きとは違う風景が広がっていた。
多分職員と思われる、白衣を着た者。人間ドックでも受けていたのか、検査着の者。まぁ、さっき目の前を勢い良く走って行った者も含む、である。
それらが軍人の死体と『混然一体』となって、廊下に『撃ち』捨てられている。そこら中から、血の匂いがしていた。
「こっちにも『地下牢』があるみたいですねぇ」
案内図を指さした牧夫が高田部長に教えてあげたのだが、周りをキョロキョロしているだけだ。
聞いている様子はない。いや、『そんなことあぁ判っている』とばかりに、拳銃を握り締めた右手を振った。聞こえてはいるようだ。
どうやら等間隔で『川』の字に並ぶ建屋の地下に、何の罪か知らないが、拘束されている人が沢山いるようだ。
元気な人から、元気でない人まで。千差万別だ。
廊下に転がっている軍人とは、違う制服の軍人。吉野財閥自衛隊の皆さんだ。色味が少し違うので、誤射することはない。
その兵士がチームを編成して、あちらこちらを制圧している。
基本『不意打ち』だったらしく、敵の守備兵は『成す術無し』の状態だ。発見された武器庫には手榴弾がホイと投げ込まれ、無効化されている。また『ドンッ』という音がした。
一体幾つ武器庫があるのだろうか。もう何回目かなんて、数えちゃいない。まぁ、さすが『陸軍』の研究所である。
「第三の方に居ましたか?」「第三って、あっち?(バンッ)」
聞かれた高田部長が、拳銃で指した方に発砲した。
「あっ、すいません。はい。そうです」「居なかったねぇ」
のんびりとした口調で答える。これだけ広いのだ。直ぐには見つからないだろう。まぁ、のんびり行きましょう。
「そうですかぁ。何だか人が多いですねぇ」
足元を見ながら『これ誰』と、検査着の男を不思議そうに眺めている。『どっから出て来た』とでも言いたげだ。
「あぁ。『こいつ』が開けたんだよっ!」
銃口を下に向け、笑顔で牧夫を指さした。
「ええっ、開けちゃったんですかぁ?」
「そうなんだよ。俺は止めたんだよぉ」
兵士と高田部長が、渋い顔で牧夫を睨み付ける。そんな『作戦事項』はなかったのに。
それにしても、どうやら『一般人』が戦場に出てくるのは、宜しくなかったようだ。
「えぇ、『弾避けに丁度良い』って、言ってたじゃないですかぁ」
「お前、酷い奴だなぁ。そんなこと思っていたのぉ?」「酷いなぁ」
言い返したつもりが、逆に言い返されて、しかも兵士まで頷いているではないか。牧夫は拗ねて先に行く。
「危ないっ(パパパッ)」「馬鹿ッ(バンッバンッ)」




