ハッカー殲滅作戦(百六十七)
「じゃぁ、朱美は『お留守番』ね」「良いんですか?」
高田部長の一言で、朱美の顔がパッと明るくなる。とても珍しいことだ。
「うん。富沢部長によろしくね」「はい!」
そんな素敵な笑顔を見ては、高田部長も素敵な笑顔を返さなければならないだろう。手を振って扉を閉める。
朱美を乗せたハーフボックスが去って行く。気持ちだけ、物凄い速さのような、気がしないでもない。
一体あの調子で、どこまで行くのやら。
「お・つ・か・れ・さ・ん」
そんなハーフボックスを見送った高田部長が、ペロリと舌を出して、目を垂らして笑っている。正直、気持ち悪い。
すると、両方の腰にぶら提げていたフォルスターから、両手で拳銃を取り出す。どうやらどちらも『ベレッタ』のようだ。
それを胸の前でクロスさせ、ドヤ顔で銃口を舐めるように舌を出して笑う。
「その顔で、今、撃たれたら、笑えますね」
隣にいる牧夫が『嫌みを込めて』言ってみたのだが、そんなのを気にする様子もない。
むしろ『一丁使うか?』な感じで、右手の方を差し出したのだが、牧夫は『とんでもない』と手を振って断る。
すると高田部長は、再びベレッタを胸の前でクロスさせ、ドヤ顔で銃口を舐めるように舌を出して笑う。
「それ、あと『何回』、見せられるんですか?」
二人は歩き出した。付近を制圧した皆さんが、通路の向こうで撃ち合っているのだろうか。銃声がやかましくなっている。
「一人、『撃ち殺す度に』だぁ」「勘弁して下さいよぉ」
二人は、そんな通路に向かって歩いている。
すると、通路の手前で『ドヤ顔』を止めると、両方の拳銃をクルクルッと回して、ホルスターにストンと収めた。
通路は三メートル程の幅で、軽自動車位なら通れるだろうか。それが暫く直線で続いているようだ。等間隔で明かりが点いている。
少し先に、鉄格子の前で盾を出し、応戦している一団がいる。時々現れる敵に、発砲しているようだ。そこへ向かって二人は歩く。
すると通路の窪みに、自販機を見つけた。
「あっ、ドリンクありますよ? 買って行きます?」
「何? 奢ってくれるの? じゃぁ、ブラック。冷たいの」
言い出しっぺの牧夫は渋い顔だ。このままだとどうなるか。予想できるだけに、嫌な予感しかしない。
「本部長の分も買って行くか!」
「やっぱり、そうなりますよねぇ」
渋い顔だ。結局買うのは、牧夫になってしまうのだ。
「お前、手ぶらで迎えに行く訳にも、行かないだろう?」
「そりゃそうですけどぉ。ありゃ、細かいのあったかなぁ」
何だか、今時『現金』しか使えない自販機だったので、渋い顔だ。




