ハッカー殲滅作戦(百五十八)
暗闇に近い地下牢は、静かで良い。
まぁ、時々『ガンッ!』「静かにしろっ!」なんて聞こえているが、それ位は騒音の内には入らない。生きが良いのがいるなぁ。
ベッドのシーツはさっき、少しだけ血を拭くのに使ってしまった。トイレの水を浄化して、飲用するのにも使えるだろう。
『ネズミ』や『G』が出る気配はない。うーむ。食料調達に困る。
しかしこんな所に、いつまでも居るつもりはない。
本部長はベッドに座って、瞑想していた。
地下牢の扉は電子ロックで、破壊コードを入力すれば、いつでも脱出可能だ。北海道の地獄に比べれば、ここは天国に等しい。しかし、どこをつねらなくても『夢ではない』ことは明らか。
車が到着したのは、曲がった回数と距離からして、都内である。
しかも新宿辺り。歌舞伎町を通ったのは確かで、『オンナの匂い』がプンプンしていた。『フェニックス』の朱美ちゃん元気かな。
まぁその内に、高田部長が来るだろう。
そうしたら電子ロックを破壊して、こんな所はさっさと脱出。かかって来る奴は、どいつもこいつも皆殺しだ。
これだけの施設。ガスの施設もあるだろう。
そうしたら、ガスの冷却装置に割り込んで停止させ、緊急遮断弁への電源供給を停止。速やかに変電施設に侵入して、昇圧したままロックしてやる。
今日は新宿で『花火』だ。『しだれ柳』とは行かないがな。
あと、情報サーバは、保存されているファイルと同名の『ゼロバイトファイル』を生成し、強制バックアップを開始だな。
全ての世代、全ての保存サーバに『ゼロバイトファイル』を送ってやるからな。
本部長は瞑想しているのに、はやる気持ちを押さえられない。うっかり『ニヤリ』と笑ってしまった。
慌てて『ペチン』と自分の頬を叩く。
どうも自分は『顔に出やすいタイプ』のようだ。いかんいかん。
さっきから『監視員の足音』が『高田部長の足音』に聞こえてならない。
だから『コツコツ』という足音が近づいて来る度に、自然と笑顔溢れる『素敵なお顔』になっているのを自覚する。
ドアが開いたら、とりあえず顔面に一発パンチ。
向こうも警戒して、拳銃をぶっ放して来るだろうから、そこはヒラリと躱して、拳銃を掴んで捻る。
まぁ、トリガーに入れっぱなしの人差し指が、折れるかもしれないが、俺の指じゃないし問題ない。
あいつだって『瓦割り演舞』に、めちゃくちゃ丈夫な『三州瓦』を用意したんだ。覚えてるからな。二十枚割ったら小指折れたわっ。
これでチャラにしてやっからよ。早く来い。ニヤニヤ。ペチン。




