ハッカー殲滅作戦(百五十五)
何故か『NJS体操』だけは全員で行い、肩を回しながら高田部長が言う。
「じゃぁさぁ、牧夫さぁ、朱美連れて、先に行ってくれる?」
「何処へですか?」
曖昧な指示に、牧夫は首を傾げる。朱美も大分前、高田部長が『本気』を出した所から、何が何だか判らないでいる。
「知らないよぉ。お前が調べたんだろぉ?」
「俺がですかぁ?」
牧夫は自分を指さして考える。
何だろう。仕事が早すぎて、忘却の彼方に飛んで行ってしまったのだろうか。
それにしても、流石は高田部長である。何かの『きっかけ』を覚えていて、いつまでも『ネチネチ』と言って来る。
今回もきっと『それの類』に違いない。
「あぁ、あぁ、そうですね。了解です。お任せ下さーい」
こういう時は、調子良く合わせて置けば良いのだ。
するとどうだろう。やはり高田部長が両手を『拳銃』のようにして牧夫を差すと、明るく褒め称え始める。
「おぉっ? 良いねぇ! お前、段々『頭』、回るようになって来たんじゃねぇのぉ?」
「判りますぅ? 百八十度なら余裕っすぅ」
「それは『普通』だろうがっ」
どうやら『返し』がダメだったらしい。普通に突っ込まれて『お褒めタイム』は即終了した。
「じゃぁ俺も、『吉野財閥自衛隊』の皆さんと、後、追うんで」
「何ですか? それっ」「何ですか? それっ」
珍しく気の合った、牧夫と朱美の突っ込み。しかし、そんな二人を見て『息が合っている』と感心したのか、高田部長は満足そうに『うんうん』と頷くだけだ。
「えっ、何? お前らも戦ってくれるの? 銃、要る?」
どちらかと言うと『左寄り』だった拳銃を、今度は『右寄り』にビシっと振り直し、高田部長が聞く。
しかし二人共、やっぱりを息を合わせたように、右手を顔の前で『ブンブン』振るばかりだ。
「じゃぁさぁ、着いたら『ゴーホーム』。帰っても良いから」
「どこにですか?」
そうだ。自宅には『危ない連中』が、『家族を人質』にして、待っているのだ。
武闘派の『本部長』だって、いとも簡単に捕まってしまったではないか。
少なくとも、自宅に設置された監視カメラの映像を、途中までしか見ていない牧夫は、そう思っている。
「とにかく、黙って行ってくれる?」
高田部長、とにかく『無茶』を言って来る。




