ハッカー殲滅作戦(百五十四)
ミントちゃんの再起動に、五分も費やしてしまった。
一度ダウンしてしまうと、薄荷飴全員の『認証コード』が必要になる。
除名した『アルバトロス』は良しとして、『エンペラーペンギン』は存命である。
これには高田部長も困ってしまったのだが、いや、『生きている』ことに困っているのじゃなくて、『不在』であることに、だ。そもそも、『これから助けに行こう』としているのだから、そこは判って欲しい。
しかしそこは、朱美が本部長のパスワードを知っていたので、難なく突破できた。
問題は、牧夫である。こいつのせいで、四分半も無駄にした。『俺はホークだ』の一点張りで、中々『カイト』を認めなかったのだ。急いでいると言っているのに、強情な奴だ。
『皆さんおはようございます。今日も元気に頑張りましょう』
天井からミントちゃんの『人工音声』が聞こえて来る。
「やっと立ち上がったよぉ」
高田部長が朱美を睨み付けるが、それも仕方ない。
『それでは、NJS『五訓』唱和をお願いします』
何故なら、ミントちゃんの『声の主』が、朱美だからである。AIが暴走しないように、『朱美の声による指示』は、全てに於いて『優先第一』なのだ。
朱美が薄荷飴の一員になった時に、早速『富沢部長からの切り替え』が行われた。その理由は当然、何度も『緊急停止』させていたからだ。
『続きまして、NJS『社歌』斉唱です』
「お前もお前だよぉ」「えっ? 何ですか?」
直立不動で社歌を歌っていた牧夫が逆に聞く。思わず高田部長は、溜息をして苦笑いだ。
『輝く明日を作るため。えぬじぇいえーす♪』
「いや、別に歌わなくて良いからな?」「そうなんですかぁ?」
ミントちゃんの起動時に流れる『定型句』に、いちいち反応しているのは牧夫だけだ。
そんなんだから、高田部長は、牧夫への苦情を、不覚にも忘れてしまった。
確かに『定型句』中は、何も処理を受付ないので、他のメンバーは暇そうに牧夫を眺めて、『ニヤニヤ』しているだけだ。
『ありがとうございました。では『NJS体操』です』
これって、パソコンより『起動が遅い』と、言えるのでは?




