ハッカー殲滅作戦(百五十三)研究所へ突入せよ
「じゃぁ、そろそろ『本気』出して行きましょうかっ」
両手で揉み手をしながら、高田部長が立ち上がった。
という『シーン』は、だいぶ前からの再生である。
話の都合上、富士山レーダーについてのごたごたから、ちょっと『森の脇道』に逸れてしまったが、この『ハッカー殲滅作成』も、そろそろ大詰めである。
「ミントちゃん、『写真合成』できた?」
『ハイ。ご用意出来ました』
流石AI。仕事が早い。たちまち複数の『修正後映像』を、スクリーンに映し出した。
左からA、B、Cとあって、その後も指示がし易くなっている。
「ミントちゃん? これ、なぁにぃ?」
『大きな声では言えませんが、『お好み』に合わせました』
それにしても、高田部長は渋い顔だ。
A『弓原徹の顔を消し、後ろでエロ本を広げているのを拡大した画』
B『Aに写るエロ本の画を『巨乳』にした画』
C『Aのエロ本を持つ顔を『弓原徹』に変更した画』
D~H『Bの画について、エロ本内二か所のカラーバリエーション』
「どうする? Cで良い?」「止めて下さい」
朱美に渋い顔で相談してみたのだが、やはり、あっさりと拒否されてしまった。
「ミントちゃーん。『ちゃんとしたの』はないの?」
『お言葉ですが、『使用目的』が判らないので』
寂しい回答だ。ここが人間と機械の分水嶺なのだろうか。高田部長は、次期バージョンの構想を始めた。
いやいや。待て待て待て。ちょっと待とう。
それは、『本部長』を、救出してからの話だ。
「朱美と牧夫を『ハーフボックス』に乗せてさぁ、『夫婦が乗った』と、認識させて欲しいんだよねぇ」
『畏まりました。お任せ下さい』
さっきの声の調子と変わらないのだが、安心感がある。
「急いでいるんだけど、どれ位で出来る?」
腕組みをして、ミントちゃんに相談する高田部長。今日の彼は、指示と言い、態度と言い、いつもとは違う感じだ。
『只今、四十八手中、三十六手まで合成が終わっています』
「えっ? ミントちゃん? ちょっとそれはぁ?」
高田部長も、流石にそれは『マズイ』と思ったのだろうか。しかし『何の四十八手』かは報告がない。
『お急ぎのようなので、途中経過を表示します』
「ミントちゃん止めてっ!」
『ピーッ』
朱美の大声で、ミントちゃんが緊急停止した。
やはり『人工知能』を使いこなすのは、中々に難しいようだ。




