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ハッカー殲滅作戦(百四十五)

(どうするんですかぁ。四人になっちゃいましたよぉ)

(そうだなぁ。じゃぁお前、何人、れる?)

 ジープ側には、多分聞こえてはいないだろう。超ヒソヒソ声による黒井の泣き言と、それに答える黒田の問いだ。


 流石の黒田も、四人相手では分が悪いと踏んだのだろうか。

 さっきまで『二人をる』と、力強く言っていたのに、一分もしない内に二人追加で、困っているのだろう。


(無理ですよぉ。うちら、丸腰なの忘れたんですかぁ?)

 それに加えて、この情けない声。空の上では勇ましいパイロットも、地上ではみんな、こうなんだろうか。そうね。『鉄の翼』がなければ、こんなものか。と、思うしかない。


 しかし、黒井のために一つ付け加えるとしたら、自衛隊の戦闘機乗りは『国内』でのみ飛行する。

 だから、『地上に降りた=国内』であり、『地上での格闘戦』は想定していない。だから、拳銃すらも携帯していないのだ。


(じゃぁ俺が運転手をるからお前、大声で向こうに走れ)

 黒田が真顔で『ビシッ』と、ジープから四十五度の方角を差した。

(大丈夫なんですか? それで)

 心配そうに黒井が聞く。黒田は力強く頷き、黒井の肩を叩く。


(俺は助かる)


 突然風が吹いて、木々が揺れ出した。草むらも揺れている。


 ジープ横の歩哨二人が、銃を構えて戦闘態勢に入る。音がする方にブンブン銃を振り回し、ライトで草むらを照らし始めた。

 そこに、丁度無線が入ったようだ。助手席の男が無線を手にする。


「こちら本部。何っ! もう一度正確に言えっ! 本当かっ?」

 何かが起きた。ジープの他の三人にも、それは判る。

 そしてそれは、近くの草むらで、横っ腹をド突き合っている二人にも判った。まだ静かにド突き合いながら、様子を伺っている。


「鮫島少尉、一人やられました」「何だとっ!」

 その返事は、無線係がマイクを置いたのと同時だった。

 どうやら、四人目の歩哨が『鮫島少尉』だったようだ。


 無線係が地図を広げ始めた。右手で地図を押さえ、現在地を左手の親指で、問題の地点を人差し指で指している。

 それを鮫島少尉が覗き込む。三人目の歩哨は、辺りを警戒しながらジリジリと助手席へと近付き、チラっと横目に地図を確認した。


「近いじゃないか。突破されたのか?」

 鮫島少尉が聞く。すると無線係が渋い顔になった。

「狩野の意識がまだ戻らないのですが、その可能性もあると」

「どういうことだ?」

「段差で落ちて腰を打ったらしいのですが」

「しょうがねぇなぁ。『奴』らしいなぁ」

 鮫島少尉の愚痴に、一同笑う。無線係は続きを話す。


「それで、ションベンしている間に、気絶したみたいで?」

「はぁ? しょう、が、ねぇ、なぁあぁ? やつ、らしいぃかぁ?」

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