表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
508/1536

ハッカー殲滅作戦(百四十二)

 山狩りをするときの基本は、隣との距離を一定に保つこと。

 そして、『隣の顔』を良く覚えておくことだ。


 富士山麓オウム鳴く。

 それは、この地方に昔から伝わる『伝承』だ。オウムが、一体どんな鳴き声なのか知らないが、『オウムが鳴いたら敵がいる』とだけ覚えて置けば、何とかなる。そう教えられてきた。


 山狩り中の狩野は、そんな『格言』を思い浮かべていた。

 暗くなった森の中で『人影』を探す。それが、どんな奴なのか判らない。例えば、草むらの中で『用足し』をしている所に遭遇してしまったら、どうするか。『小』ならまだしも『大』なら?


『あっ、どぉもぉ。ケツ、拭いても良いですかね?』

『早くしろっ』

『ズボン履いても、良いですかねぇ?』

『早くしろっ』


 まぁ、これ位は見逃してやっても良い。始末が悪いのは、藪の中から『ニュッ』と出て来て、喉笛をナイフでグサリ。


 うはっ。小説に書こうとするだけで、結構気持ち悪い。


 やはり、狩野の運命が『死』であったとしても、本人は家族に『国を守る』と強い意志を見せ、長い訓練に耐え、そして今日は温泉を我慢して、山狩りに参加しているのだ。

 そんな、登場一話でセリフもなく、『グハッ』の一言で死んでしまうには、何とも可哀想である。


「どぉもぉ」「うわっ」

 二メートル程の段差を乗り越えようと、顔を出した瞬間だった。

 見知らぬ『爺さん』から、笑顔で出迎えられる。


 そして、そのまま口元を『ガッチリ』掴まえられて、段差の下に叩き落される。

 全くもって、容赦のない攻撃だ。やはり戦場はこうでないと。


 ケツを拭くのを待っていては、いけないのだ。


「殺したんですか?」「いや、気絶しただけだ。シーッ」

 狩野の口を押さえてたままの黒田が、後から降りて来た黒井に言う。人差し指を口にあてて、『静かにしろ』の合図だ。


「おいっ、狩野! どうした? 落ちたのかぁ?」

 仲間が呼んでいる。流石に『大人二人』が段差の下に落ちたのだ。物音位はしてしまう。


「あぁ、ちょっと腰打ったけど、大丈夫だ」

「気を付けろよ? 早く来いっ」

「ションベンするから、三十秒待ってくれ」

「何だぁ? おい、山中っ、狩野の方に少し寄れっ」


 黒井は目を丸くした。やはり『富士山麓オウム鳴く』は本当だったのだ。声真似をした黒田が、ニヤリと笑って走り出す。


 行先は『ルート・ファイブ方面』だろう。どこだか知らぬが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ