ハッカー殲滅作戦(百三十八)
「ミントちゃん、向こうの『鮫島少尉』を呼び出してっ!」
高田部長が再び天井を向いて、ミントちゃんに指示する。いやいや、本当に人工知能って便利ですわ。
『承知しました。はいどうぞ。あっ』
『あっ、びっくりして撃っちゃった。何だこりゃ?』
スクリーンには、拳銃の『デザートイーグル』をぶっ放した鮫島少尉の『焦り顔』がアップになっていた。
どうやら『急なリクエスト』だったので、近くにいたミントちゃんを操作して、鮫島少尉の背面を捕ったようだ。
幾ら何でも、それはビックリすると言うものだ。
「すいません、鮫島少尉、ちょっと『悪いお知らせ』があります」
『あっ、この声は『イーグル』さん、あらら、『デザートイーグル』で撃っちゃったっ』
こちらの映像は届いていないのだろうが、鮫島少尉は明るく振舞っているようだ。
「大丈夫です。それ位じゃ壊れませんから」
『あはは。すいません。これ以上の『悪い知らせ』とは、一体、何でしょうか?』
「ちょっとお話辛いのですが、どうやらそちらに、『ネズミ』が侵入しているようでして」
『本当ですか? この演習場にですか? ちょっと静かにしろっ』
何だよ。今度は富士山演習場の方も、外野が騒がしいではないか。
「はい。どうやら『富士山レーダー』に似せて、位置情報でも掴んでいた可能性が濃厚です」
『承知しました。報告ありがとうございます。直ぐに確認し、後はこちらで対処致します』
丁寧な口調の裏で、沸々と沸き上がる『殺意』が感じられる。
「よろしくお願いします」
高田部長は頭を下げた。そして牧夫の頭を『ポコン』と殴った。
『お前らっ! 温泉は後回しで『ねずみ狩り』だぁぁっ(ブチッ)』
帰還するミントちゃんの通信回線が、開きっぱなしだったようだ。
ホバリング姿勢から、高度を徐々に上げて行くと、その一部始終がスクリーンに映し出されていた。
鮫島少尉の雄たけびに呼応して、集まっていた隊員達が一斉に手を挙げてそれに答える。そして、用意されていたジープに、次々と飛び乗って行くではないか。
ジープのライトがオンになると、行先が『温泉』からクルリと回って『ねずみ狩り』に変わる。
これから、実弾フル装備の、欲求不満と怒りに満ちた精鋭達による『夜のねずみ狩り』がスタートだ。
何だったら、機械化軍団を投入しても良い。
いや、それはつまらないから、後回しだな。




