ハッカー殲滅作戦(百三十五)
「遂に討ち取ったぞぉぉぉっ!」「うおぉぉぉぉ」
「仲間の仇だぁぁ」「こんにゃろめぇ」「よくも散々とっ!」
何やら、物凄い怒号も混じって聞こえて来る。
動かなくなったミントちゃんを、寄ってたかって蹴り飛ばしたり、小突いたり、好きにしているようだ。
「おりゃぁぁっ!」(ポッコーン)
「おおっ良いぞうっ!」(パパパッ)(パパパッ)(パパパパッ)
誰かが『白旗人形』を蹴り飛ばしたようだ。そうしてそれが地面に転がると、これまたハチの巣にしているようだ。
まったくもって、容赦ない。人の本性を見ている気がする。
そうして、ひとしきりミントちゃんをボコボコにした後、次々と沸いて出て来た『ゾンビ』も含め、『集合写真』に納まったようだ。
きっと、明日の『陸軍新聞』にでも、載るのだろう。
「好きにさせといて、良いんですか?」
上空のミントちゃんからの中継映像を観ながら、牧夫が高田部長に聞いた。もう、戦闘訓練は終了だろう。
「良いんだよ。これでな、もし『敵』が観察しようと思ったら、誤った情報が行くだろう?」
不敵な笑みを浮かべながら、高田部長が言う。
「『888番』って、どの辺が『特別』だったんですか?」
牧夫が首を傾げている。『ぞろ目番』のミントちゃんは、『特別仕様』となっているが、詳しいことは本部長と高田部長しか知らないのだ。
「こいつはな、『特別弱い』んだよ」
「え? 良いんですか? そんなんで? 仕様と違いますよね?」
牧夫が渋い顔だ。仕様通りでない物を収めるなんて、酷いではないか。
「だから良いんだよ。こいつはな、『鹵獲用』と言ってな、掴まって、相手に渡るのを目的とした物なんだ」
「そんなことして、どうするんですか?」
「馬鹿だなぁ。敵を騙す為だろうがぁ」
高田部長が苦笑いで答えている。言われてもまだ、牧夫はポカンとしている。
むしろ、向こうの富沢部長と朱美の方が話を理解して、『性格わるぅ』とでも言いたそうに、嫌ぁな目で高田部長を睨み付けているではないか。
確かに『鹵獲用』は、機体の材質、部品の種類、組み込みソフトウェア、緊急自爆装置、バッテリーパック等、『最高機密』に属する物品については使用されておらず、分解調査を行っても無意味だ。
そして、仕掛けられた発信器を辿って行けば、『敵の調査機関』の場所が判る。というおまけ付きなのだ。
「じゃぁ、そろそろ『本気』出して行きましょうかっ」
両手で揉み手をしながら、高田部長が立ち上がった。




