ハッカー殲滅作戦(百三十一)
千葉、長野、秋田の三名は、仲良しである。苗字が『県名』ということで。
特に今は、三人が背中合わせになって、敵が来るのを待ち構えている。銃を構えて引き金に指を添えている。
仮に仲間が来たとしても、反応して撃ってしまうくらいに。
そして三人共、首筋に『赤いペイント痕』がある。最初の戦闘で実験台になったのだ。
一日に、二度も死んでなるものか。『四階級特進』なんて言われて、絶対からかわれるに決まっている。
安全ゴーグルの奥にある目は、爛爛と光り続けている。
千葉が窓の外に、一瞬『暗い影』を見た。すると突然目の前が、真っ赤になる。
「やられたっ。はえぇっ」「まじかっ」
本来『死亡認定者』は『発言禁止』である。しかし、千葉が『ルール違反』をしている訳ではない。
千葉の目の前にあるのは、『アクリルの分厚い板』である。
「流石にコイツは『貫通』できなかったらしいな」
ペイント弾により真っ赤になっているが、まだ使えそうだ。
「全然目で追えなかった。あんなの『見えないに等しい』ぜ」
「よし。無線で伝えろ」「ラジャー」
長野が無線で本部に状況を伝えている。これで一つ、有効な対策が採れるだろう。
「おい、もう『衛生兵』が全滅らしい」「何で?」「まじで?」
「俺も判らん」
長野が首を振る。三人は、それっきり黙った。
どうやら『怪我をしても一人』らしい。寂しいものだ。
しかし、今までの経験上『一発必殺』なのだ。どう考えても、今日は基より出番はない。そう思えば、ちょっとは気楽なものだ。
「おい、あそこっ。フラフラしているのがいるぞ?」「どれ」
秋田が守る窓の外に『一機のミントちゃん』が、ゆっくりとホバリングしている。その場で旋回しているところを見ると、まるで『中継役』でもしているかのように、暇そうだ。
それを秋田と長野は、無線で本部に報告し、目を合わせて頷く。
「撃て撃て撃て撃てっ!」「おらららららららっ!」
アクリル板越しに89式をぶっ放す。するとミントちゃんに、複数弾命中したのだろう。バランスを崩して傾く。
ちらりと見えたブレードが止まっている。そして、内部の回線がショートしたのだろうか。黒煙を吹き出し始めた。
それでも、一旦上昇していく。まるで『助けを求める』ようだ。
「潰せっ」「逃がすなっ」「突撃だぁぁっ」
三人は新しい弾倉に入れ替えて、隠れ家を飛び出した。そして、フラフラしているミントちゃんに、狙いを定める。
『パスッ』『パスッ』『パスッ』
千葉、長野、秋田の三名が無言になった。すると、どうしたことだろう。煙を吐いていたミントちゃんが、正常に戻ったではないか。




