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ハッカー殲滅作戦(百十四)

 可南子の後ろに忍び寄る影あり。ゆっくりと両手を伸ばす。

 しかし可南子は、週に一度のお楽しみ『デカンタ刑事』に夢中で、それに気が付かない。

 今日の事件は、やはりしょうもない内容であった。


 説明しよう。事件の発端は、一本のタレコミ電話だった。

 その電話の内容は、最初はお天気のグチから始まり、最後に洗濯物のグチで終わる、極一般的な内容だった。


 しかし、デカンタ刑事は聞き逃さない。話の内容から、『消費期限』と『賞味期限』が、なんと『併記されている』商品があることに、気が付いたのだ。

『これは事件だっ! 出掛けてくるっ(デカンタァ~♪)』


 毎回毎回、よくもまぁ『ネタ』が尽きないものだ。

 とりあえず物語は佳境を迎え、今まさに、事件の関係者が集い、デカンタ刑事が『事件の真相』を暴こうとしているのだった。


「可南子っ! 逃げるんだっ!」

 司令官席のディスプレイを、牧夫ホークが揺すっている。

「壊すなぉよ」「何言ってるんですかっ! 可南子っ!」

 高田部長イーグルは『うるせぇなァ』の目で笑っている。


 散々『ハッカーの家族』が縛り上げられているのを見てきたからだろう。『どうせ死なねぇよ』とでも、思っているのだろう。

 富沢部長ブラックスワンの表情も、残念ながらそんな感じである。一方の朱美ミケは、不意に『最近ご無沙汰』である旦那の顔を思い出していた。

 今日は調子が悪いので、ぶん殴られないように説明すると、転勤先の富士山頂にある測候所にまで、わざわざ押し掛けたりはしないだろうと、思っているからだ。朱美ミケ本人も含めて、だが。


『おとなしくしろっ!』

 とでも言いながら、羽交い絞めにでもしたのだろう。本部分一行目の続きから、やっと時点が動き出す。


 しかし可南子は動かない。多分『最初からおとなしい』のであって、言われなくてもおとなしい。

 と思いきや、テレビ画面を見ながら大福を一口食べた。目は爛爛としていて『凝視』しているのだが、体が勝手に動いているようだ。


 羽交い絞めを食らいながら『もっくりもっくり』と大福を咀嚼して、『ゴクン』と飲み込もうとした、そのときだった。


『んんんっ! (ドンドンドン)』

 片目を瞑ると、胸を叩き始める。どうやら喉に、大福が詰まってしまったらしい。テレビの展開に、ちょっと驚いてしまったのだろう。片目を大きく見開いて『そうかそうか』と、頷いている。

 その間も、口は『もっくりもっくり』していて、胸は『ドンドンドン』である。


 やがて左手に、『お茶』を握っていたのに気が付いた。

 可南子は相変わらず、片目でテレビを凝視したまま、それを口にする。一口、二口。すると『大福』は、無事喉を通過したようだ。

『大福、美味しいわぁ』

 とでも言ってから、安堵の表情になると、両目でテレビに戻った。

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